4.実践的な訓練というが、実は笑える
(1)戦車にたなびく国旗の角度が現実にはあり得ない
戦車が時速50キロで走行していれば、旗の向きは戦車の後方にたなびくはずである。
それが北朝鮮国旗と分かるように、すべて正面を向いているのである。つまり、走方向と旗の角度が90度になっている。
写真5 M1酷似戦車の隊列の移動と北朝鮮国旗
戦車の速度が遅く風が強い場合は、このようなことがまれに起こるかもしれないが、すべての戦車にこのようなことが起こることはない。
つまり、たなびく旗はすべて後から合成したものと判断できる。
演習を実施している場合、その国の国旗を戦車に取り付ける必要があるか、前線に近くて、国の識別が必要な場合には取り付けることもあるだろうが、通常は取り付けない。
取り付けていれば、敵から発見されて攻撃を受け破壊されるからだ。
なぜ、合成までして北朝鮮国旗を取り付けたのか。
北朝鮮が国家としての威容を示すためなのだろう。戦車兵大連合部隊の演習というのは、見せかけの演習なのである。
(2)河川、水たまりなどの泥濘地を勢いよく走れるからくり
戦車は、河川の中を走ることは極めて難しい。
それは、水が戦車内部に入るからではなくて、川底が泥濘で戦車の履帯が泥濘地に引っかからないで空回りするからだ。
川底が礫で固められていれば通過することができる。
写真6では、北朝鮮の戦車が泥濘地を勢いよく走っている。それには、仕掛けがあるのだ。
その仕掛けとは、川底に作ったコンクリートの道路である。その上を走っているのだ。
旧ソ連が、戦車全体が水没しながら渡河する写真や動画を公表していたが、そのからくりが同じものだった。
写真6 北朝鮮M1酷似戦車の渡河行動
ウクライナ戦争では、川があれば、戦車や装甲車はそれが障害となって止まる。そこで、応急の橋(戦車橋や浮橋など)をかけて、その川を渡河することになる。
(3)最近、高級将校の戦闘服に勲章の略章を付ける
北朝鮮の軍人は、金正日から授与された勲章を制服のほかに戦闘服にも付けたいらしい。米欧では、制服にだけ勲章の略称を取り付ける。
その略称を戦闘服に付けるのが滑稽で、現実にはあり得ないことなのである。
なぜかと言うと、戦闘服を着るのは、いつでも直ちに戦場に行けるという意味である。
だから、部隊章、階級章も名札も、遠くからは見えない黒の刺繍で作られたものが、戦闘服には張り付けられている。
写真7 高級将校の勲章の略称と帽章
戦場で戦闘服に勲章を付けていると、敵の格好の的となり、狙われて殺害される。
ロシア軍将校がウクライナ戦争の当初、将軍がスナイパー(狙撃手)に多数殺害されたのは、通信傍受で概ねの位置が特定されて、その際、将軍とわかる印を付けていたからだ。
さらに将軍たちの戦闘帽の徽章が金色に輝いている。極めて目立つものだ。彼らは、どうぞ私を撃ってくださいと言わんばかりだ。
(4)金正恩自らが戦車を操縦したって本当か
金正恩氏の大きな体で戦車に入ること、そして操縦することが可能なのか。戦車兵は、もともと小柄な兵士が選ばれる。その戦車兵は、戦車によじ登って入る。
金正恩氏が戦車に入るのであれば、梯子がかけられて、そこから登って、狭い穴から入ることになる。
金正恩氏のあの大きな体で戦車に上り、入ることは難しいだろう。
金正恩氏が戦車内に入るのであれば、彼をクレーンで吊り上げて、入れるようにしなければ無理である。さらに、狭い内部に入れても、体が邪魔で、手足を動かせないだろう。
写真8 金正恩が新型戦車を操縦している様子
自ら運転したとするならば、クレーンで吊るすなどの過程を思い浮かべるとかなり笑える話である。
金正恩氏をクレーンで吊るすことはしないだろうから、実際は戦車内部には入れない。
であれば、金正恩氏が戦車を操縦している写真は、その顔だけを戦車の操縦席の上に合成したものと考えるのが妥当であろう。