三浦翔平さんが演じる藤原伊周(右から2番目/写真:NHK番組公式サイトより)

『源氏物語』の作者、紫式部を主人公にした『光る君へ』。NHK大河ドラマでは、初めて平安中期の貴族社会を舞台に選び、注目されている。第13回「進むべき道」では、一条天皇が即位して4年の月日が過ぎて、元服式を迎える。藤原兼家が権力を掌握するも、体調が思わしくなく、後継者争いが本格化していき……。今回の見どころについて、『偉人名言迷言事典』など紫式部を取り上げた著作もある、偉人研究家の真山知幸氏が解説する。(JBpress編集部)

一条天皇の元服で「加冠役」を務めた兼家の胸の内

 何としてでも孫を天皇にする――。

 そんな藤原兼家の野望がついに実現することとなった。「寛和の変」によって、花山天皇が出家すると、皇太子で兼家の孫にあたる懐仁(やすひと)親王が、一条天皇として即位する。寛和2(986)年6月23日のことである。

 一条天皇はわずか7歳だったため、兼家が摂政となり実権を握ることとなった。兼家は自分の息子たち、道隆・道兼・道長を露骨に出世させていく。

 約4年後の永祚2(990)年正月5日に一条天皇が元服。今回の放送回は一条天皇の元服シーンから始まり、こんなナレーションがなされている。

「この日は一条天皇元服の日。加冠役を務めた兼家は、政権トップの座を揺るぎないものとした」

「加冠役(かかんやく)」というのは、元服のときに烏帽子(えぼし)をかぶせる烏帽子親(えぼしおや)のことだ。一条天皇の元服に伴い、兼家は摂政を辞して関白となった。摂政の辞表の中では、こんなふうに述べている。

「齢は懸車に先立ちて、身は己に病あり」

「懸車」とは、中国で定められた退官の年齢のことで、70歳のことをいう。70歳を前にして、病に侵されていると書いている。

 一条天皇が元服して、これからという時ではあったが、今回の放送回にあったように、病によって兼家の先が長くないことは、自他共に感じているところであった。

柊木陽太さんが演じる一条天皇(左/写真:NHK番組公式サイトより)