テクノロジーを駆使したデータ収集能力
そもそもスカウトは、優れたサッカー選手を発見するために情報を集め、評価を行う。情報収集の場は、目当ての選手が出場する試合だけではない。そもそも、自チームにはどのような選手が求められているかを把握している必要がある。自チームについて理解していなければ、どの選手を調査すべきなのかの判断もできないのだ。
テクノロジーの進化により、選手のパフォーマンス情報が広く入手できるようになった。かつては一部の関係者しか見られなかったような情報に、ファンがスマートフォンからアクセスする時代だ。当然、スカウトとデータの関係性にも変化が訪れる。
肌感覚として、「テクノロジーを使用するべきか、しないべきか」という0か100かの議論はイングランドではほぼなくなり、今は「最大限活用するためにはどうすればよいか」へと議論が移ってきている。
今後のスカウトには、テクノロジーを駆使したデータ収集能力も求められることになりそうだ。
データだけでは選手を理解するのは難しい
便利なデータを活用する一方で、過度な信頼を置いてしまうのは危険でもある。
例えば、複数人の選手のパフォーマンスに対して同じ数値が出たとしても、そこに至るまでの方法や環境は異なる。その数値が出た要因がどこにあるのか、解明するためにはデータを見るだけでは不十分だ。
これ以外にどのような要素が絡んでくるかというと、ボールの出し手に関しては、その選手の認知能力、技術力、戦術理解力、フィジカルなどだ。こうした要素はデータで測定することが非常に難しい。
現在のテクノロジーでは、選手の能力すべてをデータ化することはできない。そのため、選手を理解するためにはデータに反映されていない部分について、映像やほかの情報ソースを駆使して調べる必要がある。
データやテクノロジーによって得られた情報にどの程度の信頼を置くかは、クラブによって差が大きい。とはいえ「データの恩恵を享受することが多い」「今後もスカウティングにおけるデータの重要性はますます高まり、欠かせないものとなるだろう」と田丸氏は語る。