(英エコノミスト誌 2024年3月16日号)

今の株高はバブルなのか?

株価は急伸している。投資家は喜んでいる――ただし、ナーバスにもなっている。

 今から2年前、大きなバブルが弾けているとの見方にほとんどの人が同意していた。

 超低金利時代が終わりを迎えようとしており、ほとんどすべての資産クラスの土台を揺さぶっていた。株価は急落し、国債は大打撃を受け、暗号資産も大幅安に見舞われた。

 ウォール街で不吉なことばかり言う予言者たちは、それ見たことかと大喜びした。

 それまでの10年間のコンセンサス――インフレは死んだ、低金利が定着したという考え――は以前のどの投資ブームの集団思考にも負けないくらいバカげたものに思われた。

 振り子は熱狂から懐疑へ、リスクを取る投資から現金の退蔵へ、貪欲から恐怖へと振れようとしていた。振り子が元に戻るには長い時間がかかるだろう――。

大底から1年半足らずで最高値

 いや、そうでもないかもしれない。

 米国株が底を打ったのは2022年10月だ。それから18カ月も経たないうちに、世界中の株式市場が史上最高値圏に戻っている(図1参照)。

図1

 特に米国株の上昇ぶりは驚異的で、大企業で構成されるS&P500種株価指数は過去19週のうち16週で上昇している。

 人工知能(AI)に欠かせないマイクロプロセッサーを製造するエヌビディアの市場時価総額は、ほんの数カ月で1兆ドル以上も増加した。

 仮想通貨ビットコインは3月14日に史上最高値を更新した。

 しかもこの上昇相場は、金利をより正常に近い水準に戻そうとして中央銀行が容赦ない利上げ作戦を展開した後に生じており、前回の熱狂的な相場をゼロに近い低金利のせいにした人々は戸惑っている(図2参照)。

図2

 市場についての会話の方向性も正反対になり、これは果たしてバブルなのかというかつてと同じ問いかけに戻っている。