「ハピラインふくい」がJR西日本から引き継ぐ521系車両(写真は北陸本線:武生〜鯖江間)(写真:KUZUHA/イメージマート)
  • 3月16日に金沢−敦賀間で延伸開業した北陸新幹線。並行在来線であるJR西日本北陸線の大聖寺(石川県加賀市)―敦賀間の運営は第3セクター鉄道「ハピラインふくい」が引き継ぐ。福井県や県内市町村、地元企業が経営を支える。
  • 鉄道ジャーナリストの梅原淳氏は「ハピラインふくいの経営難は必至。営業赤字は年間13億6000万円程度になるだろう」と危惧する。
  • 梅原氏はそもそも、新幹線開業に伴い並行在来線を第3セクターに移管するスキームそのものが利益を確保しにくいと説明する。(JBpress)

(湯浅大輝:フリージャーナリスト)

──JR西日本から大聖寺―敦賀間の並行在来線の運営を引き継ぐハピラインふくいは赤字が必至だと予想されています。なぜですか。

梅原淳氏(以下敬称略):福井県は年間7億円程度の赤字と試算していますが、赤字額はより大きくなる可能性もあります。私は、ハピラインふくいの営業損失は13億5938万円になると予想しています。鉄道会社の収支の特徴は①売り上げは旅客数に比例すること、②動力費や線路、車両の保存費用などで構成される営業費用(固定費)が旅客数に関係なく一定の金額となること、にあります。

 鉄道業は装置産業です。基本的に輸送力と旅客数、線路などの固定費次第で、営業成績の大枠が決まります。

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 大聖寺―敦賀間は84.3km。営業距離が近い(100.1km)同じ第3セクター鉄道の「あいの風とやま鉄道」の営業成績と福井県の発表資料をもとに比較分析しました。

ハピラインふくいが「赤字」濃厚の理由

 ハピラインふくいの営業費用は年間48億6833万円ほどでしょう。計算式はあいの風とやま鉄道の1kmあたり営業費用が5775万円であり、これに84.3kmをかけた数字が実態に近いと考えています。

梅原 淳(うめはら・じゅん)

1965(昭和40)年6月6日東京都生まれ。大学卒業後、三井銀行(現在の三井住友銀行)に入社。その後、 雑誌編集の道に転じ、交友社月刊「鉄道ファン」編集部などを経て2000(平成12)年からフリーランスの鉄道 ジャーナリストとして活動を開始する。現在は書籍の執筆や雑誌への寄稿を中心に、講義・講演やマスメディアでのコメント活動、鉄道に関して行政や自治体が実施する調査への協力なども精力的に行う。

 あいの風とやま鉄道の旅客1人1kmあたりの営業収入は約10.3円でハピラインふくいもこれと同程度の数値になるでしょう。福井県の発表資料から算出すると、ハピラインふくいの輸送人キロ(鉄道の輸送能力)は1億7142万人キロ(1日の平均乗客数5571人×84.3km×365日)です。これに10.3円をかけると、ハピラインふくいの年間営業収入は17億6563万円となります。

 ハピラインふくいの線路には、JR貨物の貨物列車も走ります。JR貨物の線路使用料は17億4332万円ほどと予想します(あいの風とやま鉄道の1kmあたり鉄道線路収入が2068万円。84.3kmをかける)。全体としてハピラインふくいの年間売り上げは旅客の営業収入とJR貨物の線路使用料を合わせた35億895万円(運輸雑収は考慮しない)。ここから営業費用の48億6833万円をひくと年間13億5938万円の赤字が出る、という計算になります。

──そもそも、なぜ新幹線が延伸開業すると並行在来線を切り離し、第3セクターに運営主体を移管させる仕組みになっているのでしょうか。