麻生氏の発言直前に行われた日本経済新聞とテレビ東京の世論調査の「次の自民党総裁にふさわしいのは」の質問で、上川大臣は石破茂、小泉進次郎、河野太郎の各氏ら常連に続いて5%で6位にノミネートされ(1位石破、2位小泉、3位河野、4位高市、菅)、3%の岸田総理、林芳正官房長官や2%の茂木敏充幹事長、小渕優子選挙対策委員長を上回った。2月上旬に行われたTBSテレビ系の調査では河野太郎氏を抜いて石破・小泉に次いで3位(9.5%)に上昇した。わずかな期間に上川氏の認知度が高まったのは確かなようだ。

「麻生さんに限らず、この難しい局面を乗り切るには岸田さんから思い切ってイメージを変えるしかないというのが党内の相場観」(自民党関係者)。つまり初の女性党首=総理を擁立して自民党が変わったと思わせるような変革を遂げなければ、本当に政権交代に追い込まれるという党内の危機感が上川氏への追い風になっている。

上川氏の弱点は麻生氏の存在

 しかし、上川氏にも弱点はある。一つは上川氏をショーアップした麻生氏の存在だ。

「麻生さんは秋の総裁選でもちろん岸田さんではなく茂木さんでもなく上川さんを推してキングメーカーとして君臨したいのだろう」(自民党関係者)という見方が広がっている。つまり上川大臣は麻生氏の傀儡というイメージが定着しかねないということだ。

 上川大臣を評した時代錯誤的な発言や、自民党で派閥解消の動きが加速する中でも派閥存続を固守する麻生氏の姿勢に、党内からも疑問の声が上がっている。“麻生色”がついた上川氏を、果たして党内の多数派が支持するのかという問題が浮上する可能性は高い。

 また、上川氏自身が総理候補としてどの程度の力量があるのか未知数だ。上川大臣と仕事をした経験のある政府関係者は「役所のブリーフ(政策についての説明)には熱心に耳を傾けるが何をやりたいのかよくわからなかった」と述懐する。つまりは優等生タイプの政治家と言えるのだろう。また上川氏を知る自民党岸田派の関係者は「彼女は仕事熱心な半面、少し視野が狭いところが気になる。それと発信力が課題」と懸念する。

「様々なご意見や、またお声があるということは承知をしておりますが、どのような声もありがたく受け止めております」(1月30日記者会見)

 麻生氏の発言についてこのように受け答えをした上川大臣。無難過ぎるとも言える回答だ。仮に上川氏が与党の党首や一国の総理となった場合に、国際社会や国内世論に強いインパクトを与えるメッセージを発信することができるのか? 発信力という点に限って小池氏と比較すれば上川氏の劣勢は否めない。

子育て支援で政府との「違い」をアピール

 一方の小池都知事は何を考え、どう動くのか?

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