今月2日、メディアが注目する会談があった。小池都知事が総理官邸を訪れ岸田総理と会談に臨んだのだ。終了後、報道陣とのやりとりで小池知事は都が進めている子育て支援政策やエネルギー政策、都の予算などについて説明し、総理に理解と協力を求めたと説明する。

 報道陣から「支持率低迷に苦しむ自民党では小池さんと連携を望む声があるが共闘の考えは」と水を向けられたが小池氏は訝しげな表情を浮かべ「いえ、ありません」と塩対応で一刀両断した。

 しかし、小池氏の政治手法を知る、自民党の元幹部は「小池さんは都知事としてやることは全てやった。国政に戻りたがっているのは間違いない」と断言する。

 小池氏は子育て支援策に積極的だ。

 所得に関係なく都内に在住する18歳以下の子供に、1人当たり月額5000円(年額6万円)を支給する「018サポート」を実施したほか、2024年度からはこちらも所得にかかわらず公立私立いずれの高校も「実質無償化」する方針を表明している。(私立高校は平均費用である47万5000円まで支給の見通し)。高校無償化については国も推進してきたが一定の所得制限が設けられてきた。このため物価高と子育て促進の両面から公明党や都民ファーストの会などが所得制限の撤廃を求めていた。

 子育て支援に力を入れる背景として、7月に都知事の任期を終える小池氏の知事3選に向けた布石と見る向きが有力だ。

 しかし、岸田総理に子育て支援について協力を求めた点を見ると、国の子育て対策との「違い」を際立たせたいという思惑があるのかと勘ぐりたくなる。都が推し進める子育て支援が国と比べていかに優れているかをアピールし、それを求めている公明党との良好な関係(岸田政権になってから自公の関係はギクシャクしている。麻生氏が大の公明嫌いであることも要因)を維持して国政を窺う。こんな小池氏の思惑も見えてきそうだ。

 都知事選出馬の時も、「希望の党」を作った時もそうだが、小池氏は電光石火のごとく突然行動に出る。おそらく今回も小池氏は「自分が動けば政権を取れる=総理になれる」という算段が立つのなら突風のように国政進出へと舵を切るだろう。

72歳の小池氏にとって最後のチャンスか

 巷間、小池氏を担ぐとすれば岸田総理に批判的な二階俊博元幹事長や菅義偉前総理らの勢力と見られている。しかし菅前総理はまだしも、裏金問題で派閥解消に追い込まれ、自身の事務所が3000万円を超える“中抜き”をしていた事が発覚した二階氏と組むことについて、イメージを重視する小池氏が呑むかどうか疑問が残る。また、自民党の勢力とは手を組まずに国政政党=小池新党を再び立ち上げる可能性を指摘する声もある。

 今年7月に小池氏は72歳を迎える。そして同じ月に東京都知事選挙が予定されている。

 小池氏の年齢を考えれば、今回が最後の挑戦となるだろう。

 都知事3選を目指すのか、はたまた国政復帰に向かうのか。その決断を多くの政界関係者は見守っている。

永田象山
(ながたしょうざん)政治ジャーナリスト

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