(文:永田象山)
逆風にあえぐ自民党幹部らとは対照的に、にわかに脚光を浴びる政治家がいる。16年前、女性として初めて自民党総裁選に出馬した小池百合子東京都知事である。今年7月で2期目の任期を終える都知事が、4月28日投開票の衆議院補欠選挙に東京15区から出馬するのではないかとの噂が駆け巡っている。
2月7日、台湾を訪れた東京都の小池百合子知事が蔡英文総統や頼清徳次期総統と会談した。小池氏は2人の幹部と防災分野だけでなくデジタルなど様々な分野での交流や連携を進めていくことを確認した。
この訪台は予想通り中国の反発を呼んだが、小池氏は「都市外交として都市間の連携は極めて重要。(中国の)指摘はあたらないと思う」と軽くいなした。しかしなぜこのタイミングで台湾を訪れたかについて、小池氏は報道陣に多くを語らなかった。
先月末のことだった。筆者に長年つきあいのある政界関係者から連絡があった。
「小池都知事が衆議院の補欠選挙に出るって噂が出ている。情報入っていない?」
この人物によれば、自民党の一部から小池氏を公認候補として担いで戦うべきだという声が上がっているという。
1月後半から始まった通常国会。岸田文雄総理は事件化した自民党の派閥の裏金問題など「政治とカネ」で防戦一方だ。各世論調査もほぼ全社が過去最低の支持率を更新しており、与党内には「岸田さんは持たない」という空気が蔓延し政権末期の様相を見せている。
そうした最中、東京都の江東区長選挙の公職選挙法違反で逮捕・起訴された柿沢未途衆院議員が辞職する見通しとなった(2月1日に正式に辞職)。これにより柿沢の選挙区だった東京15区は4月28日に補欠選挙を行うこととなった。
冒頭の政界関係者からの連絡はこの状況を踏まえての問いであった。
確かに小池氏の動きは今後の政局の渦になると筆者は見ているが、都知事の任期が7月まで残っている中、果たして小池氏が東京の補欠選挙に打って出るのか?
2008年の総裁選出馬時と似た状況
「彼女は何というか度胸がある。たいしたものだ」
これは小泉純一郎元総理の小池評だ。
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