2月15日、ジャカルタにある父親の墓を訪問した、インドネシア大統領選での勝利が確実視されているプラボウォ・スビアント国防相(写真:AP/アフロ)

 いまから12年前、2012年の第18回中国共産党大会で、習近平国家副主席(当時)が総書記(党トップ)に選出された時、多くの西側メディアが、期待感を込めて報道した。「中国経済の開放路線の推進役」「政治の民主化にも着手するであろう改革派」……。

 私はそんな「楽観的な雰囲気」に逆らうように、「習近平体制は毛沢東路線に回帰していく」「中国経済は停滞に向かうだろう」と書いた。なぜなら、それまで3年間、北京に住んでいて、もしこの人(習近平副主席)が天下を取ったら、中国をどういう方向に導くだろうかと、想像し続けてきたからだ。

 そして私の想像は、第18回中国共産党大会を人民大会堂で取材し、初めて習近平新総書記の野太い声のスピーチを聴いた時、確信に変わった。それはまさに、毛沢東主席が草葉の陰から這い出してきたかのようだった――。

習近平体制発足時の状況に重なるプラボウォ氏の姿

2012年11月、北京の人民大会堂で開催された第18期1中全会において、党中央委員会総書記に選出され、記者会見する習近平氏2012年11月、北京の人民大会堂で開催された第18期1中全会において、党中央委員会総書記に選出され、記者会見する習近平氏(写真:ロイター/アフロ)

 何が言いたいかというと、2月14日に行われたインドネシア大統領選挙で、勝利を確実にしたプラボウォ・スビアント国防相の様子を見ていて、「2012年の中国」を思い起こしたのである。

 プラボウォ新大統領(予定者)に対しては、すでに美辞麗句に満ちた報道がなされている。「多元的民主主義と全方位外交の推進役」「若者受けするカワイイ政治家」……いえいえ、違うでしょうと言いたくなってくるのだ。この方は、もっとコワモテの大統領になるに決まっている。