ロバート・ケネディ・ジュニアが米大統領選でキャスティング・ボートを握るかもしれない(写真は2月6日、大統領選の遊説でアリゾナ州を訪れメキシコとの国境を視察、写真:ロイター/アフロ)

サウスカロライナも勝って予備選4連勝

 8か月後に米大統領選を控え、選挙は司法と絡み合って複雑な様相を呈してきた。

 共和党は、スケジュールに合わせてすでに3つの予備選・党員集会(アイオワ、ニューハンプシャー、ネバダ)を行い、「刑事被告人」ドナルド・トランプ前大統領(77)がダントツで全国党大会に向けた代議員数を獲得している。

 2月24日には唯一の対抗馬、ニッキー・ヘイリー元国連大使(元サウスカロライナ州知事)の地元、サウスカロライナ州でも予備選が行われるが、世論調査ではトランプ氏が圧倒的な支持を得ている。

 こうした「トランプ旋風」を後押しするかのように最高裁(保守派判事6人、リベラル派判事3人)が2月8日、朗報をもたらした。

 最高裁が2021年の米議会占拠事件に関与したとの理由でトランプ氏から今年の大統領選に出馬する資格を奪う判決(コロラド州最高裁判決)に対し、これを認めない姿勢を示したからだ。

 判決は後日出されるが、最高裁は8日に開いた口頭弁論で、トランプ氏が「反乱」に関与したとの理由で予備選への参加を認めない判断を下したコロラド州最高裁の権限に対し、「大統領選立候補資格を州が判断するのは越権行為だ」というもの。

 これには、リベラル派も保守派も意見が一致した。

 リベラル派のエレーナ・ケーガン判事は、原告側弁護士にこう食い下がった。

「なぜ1つの州が、自州民だけでなく、残りの国民のためにこの決定を下す権限を持たなければならないのか」

1つの州が、このように広範な影響力をもつことには疑問を持たざるを得ない」

 保守派のジョン・ロバーツ最高裁長官は、「コロラド州の判決が支持されれば他の州も追随するだろう」と述べた。

 むろん、トランプ氏が大統領時代に最高裁判事に指名したニール・ゴーサッチ、ブレット・カバノー、エイミー・コニー・バレットの3判事は、いずれもコロラド州の判決に懐疑的だった。

 この主張はこの判決では枝葉のようで、最大の争点となっているのは、「反乱」に関与した人物の公職禁止を定める米国憲法修正14条3項の解釈だ。

 同項では、対象者は現職の「公務員」(Official)であり、元公務員は含まれていないし、これから公職を狙う「一市民」も含まれていない。

 同法は元々、南北戦争終結後、負けた南部連合の「公務員」に公職につけさせないように作った法律である。

「まさにトランプを南軍の将軍に見立てた政治的思惑のある『北軍・民主党』による嫌がらせだ」(共和党支持者の一人)

「国民の4割近くが全く信用していない最高裁としては、リベラル派判事も含め、法律家としての矜持を示したのだろう」(最高裁担当記者)

news.gallup.com/confidence-institutions.aspx

 保守派判事は現職「公務員」であるか否かという点を強調して、トランプ氏には立候補資格があるとみる。

(トランプ氏が住民登録しているフロリダ州では、「刑事被告人」であるため投票資格はないが、立候補資格は認められている)

 同氏の立候補資格に疑義を呈した有権者(むろん民主党支持者たち)は35州に上ったが、そのうちワシントン州など14州は州裁判所が訴えを却下している

 トランプ氏は、自身を予備選から排除しようとする各州での動きに終止符を打つための判断が連邦最高裁で下されることを求めており、2月8日の口頭尋問での各判事の主張を聞き、胸をなで下ろしたことだろう。

 これでトランプ氏は大手を振って選挙戦を続けられる。

 もっともこの事案は、国家機密不法保持罪など91件、4つの刑事・民事裁判とは別個の事案であり、予備選で共和党大統領指名候補になろうと、大統領選がどうなろうと、最高裁はいつか判断を出さざるを得ない。