大事なプレゼンの前に動悸が止まらなくなり、頭が真っ白に――。任される仕事の責任が重くなる上に家族も守らなくてはならない。そんなプレッシャーを抱える30代・40代のビジネスパーソンがパニック障害になるケースが少なくないという。緊張のせいだと高をくくっていると気づかぬうちに病状が進行し重症化するケースもある。そこで今回はゆうメンタルクリニックグループの安田雄一郎総院長にパニック障害の兆候や治療法を聞いた。
(森 祐一:フリーライター・編集者)
逃げられないと感じる場所を避けるようになる
――そもそもパニック障害はどのような病気ですか。
安田雄一郎・ゆうメンタルクリニックグループ総院長(以下、安田):特に身体疾患がないにもかかわらず、突然のめまいや呼吸困難などが出る病気です。こうした突然のめまいや呼吸困難のことをパニック発作といって、この発作を繰り返してしまうのがパニック障害の特徴です。発作の症状としては他にも、動悸、汗、震え、息苦しさ、胸部の不快感、頭が軽くなる感覚などが挙げられます。
これらの発作が起こると、また発作が出たらどうしようと不安になることがあり、これを予期不安と呼びます。この予期不安が長く続くと、今度は広場恐怖症という症状が出ることがあります。
広場恐怖症を英語にするとアゴラフォビア(Agoraphobia)でフォビアは恐怖症という意味です。広場恐怖症といっても広い場所が怖いわけではありません。アゴラというのは古代ギリシャで人々が集会をする場所のことを指していました。つまり広場恐怖症とは、他にも人がいて逃げ出せない場所が怖くなってしまう症状のことです。
例えば電車、エレベーター、会議室、コンサート会場などです。これらに行って発作が出ても逃げられない、逃げられないのなら行くのをやめようと生活が制限されてしまうことがあります。
人前で話すときや大事な試験のときなどは、大なり小なり人は緊張するものです。緊張で汗をかいたり鼓動が大きくなったりするのは通常の反応です。しかし、それが過度に出ていたり、何の前触れもなくそのような発作が出るようになったり、また出るかもと日常生活に支障が出ていたらパニック障害の疑いがあります。
発作時に以下の症状のうち半分以上が当てはまり、なおかつ生活において不便を感じていればパニック障害の可能性が高いと考えます。
- 動悸を感じる
- ふるえを感じる
- 息切れ感・息苦しさを感じる
- 喉が詰まる感じ(窒息感)がある
- 胸部の不快感や胸痛がある