(英エコノミスト誌 2024年1月20日号)

2021年1月16日は米国にとって歴史的な日になったはずだが・・・(写真:ロイター/アフロ)

米国の企業と経済にとって、2期目のトランプ政権が意味すること

 ドナルド・トランプ氏が2021年にホワイトハウスから静かに出て行った時、米国の大企業の幹部たちはほっと胸をなで下ろした。

 そのトランプ氏がアイオワ州の共和党党員集会で次点に30ポイントの大差をつけて勝利したことから、こうした経営者は今、来年の今頃には同氏が再びレゾリュート・デスク(大統領執務室の机)の向こう側にいる可能性があるという現実を受け入れようとしている。

 本誌エコノミストはここ数週間、そうした大物経営者に話を聞いて回った。「トランプ2」の見通しに強い不安を抱く人もいた。

 だが、混乱に乗じて一儲けできると静かに歓迎する向きもあった。

鳴りを潜めてビジネスに邁進?

 大きな組織を運営する人物は楽観的でなければならない。他人がパニックになっている時に一稼ぎする機会を見つけなければならない。

 最高経営責任者(CEO)たちはトランプ大統領と不安定な関係を構築した。

 比較的ありきたりな政策については歓迎しつつ、大統領のとんでもない発言に対しては距離を取ったり、貿易保護主義に舌打ちしたりするCEOも多かった。

 連邦議会の共和党議員は、自分たちは労働者の味方だと言ったかもしれないが、実際には企業の税金をカットした。株式相場が急騰するなかで米国株式会社が惨めな気持ちになるのは難しかった。

 もしトランプ氏が本当に再選されたら、大企業の経営者たちは頭を低くして目立たないようにするつもりでいる。

(大手ビールブランドが文化戦争の犠牲になってから、「バド・ライトの二の舞になるな」という言葉が繰り返されている)

 トランプ氏が開催する経営者会議などに引っ張り込まれるのを避け、大統領と同じ写真に収まらないよう注意し、お金を稼ぐことに邁進する。

 確かに、もしトランプ氏がロシアと取引して戦争を終わらせ、ウクライナを売り渡したりすれば、西洋文明には打撃となる。

 だが、エネルギーの価格は安くなる。