ソフトバンクが胸に秘める勝算

 元々、山川について数年前から国内FA権取得後のソフトバンク移籍は球界内で「既定路線」ともっぱらだった。

 ソフトバンクには自主トレ仲間で沖縄出身の同郷・東浜巨投手や嶺井博希捕手がおり、その亜細亜大OB2人の恩師で元同大野球部監督の生田勉氏は山川にとっても「後見人」と呼ぶべき存在とされている。山川が富士大2年時に出場した日米大学野球で生田氏は当時、侍ジャパンのコーチを務めていたことから以降も両者の師弟関係は深まっていき、今や強い絆で結ばれる間柄だ。

 しかも昨オフに7年総額49億円(推定)の破格契約で北海道日本ハムファイターズからソフトバンクに加入した近藤健介外野手と山川が実は同じ代理人だったことも、西武・渡辺久信GMら複数の関係者の“暴露”によって明らかとなっている。さまざまな面で共通項が多く水面下で山川獲得に照準を定めてレールも敷いていたソフトバンク側としては、当人に予想外のトラブルが発生してしまったとはいえ、今さら後には引けず何とか目をつぶって受け入れざるを得なくなっていた側面もどうやらあったようだ。

 山川がソフトバンクと締結した契約は4年で年俸は推定総額12億円に出来高払いが付帯するとみられているが、球界全体を揺るがす不祥事を犯してしまった割にはかなりの「破格」と言い切れる。それにしても山川を獲得したことで、これだけブッ叩かれまくっているソフトバンクに“勝算”があるのかどうかはかなり気がかりだ。

 実はソフトバンクの球団内部や、その周辺でポジティブなケースとして密かに参考材料とされているのが、今オフに巨人から中日ドラゴンズへ移籍した中田翔内野手と来季からのMLB再復帰を視野に入れている前横浜DeNAベイスターズのトレバー・バウアー投手の2人だ。