大谷に“脅し文句”?

 それを踏まえた上で前出のMLB関係者はこうも明かしている。

「その流れもあってミナシアンGMを筆頭としたエンゼルスのフロントはオオタニや代理人のバレロ氏に対し、オオタニ自身が過去2018年10月に受けたトミー・ジョン手術を引き合いに出して『ツー・ウェイ・プレーヤーのリハビリシステムを知っているのは我々エンゼルスのみである』と猛アピール。

 加えてミナシアンGMは『もし他球団へ移籍するようなことがあれば本意ではないが、ショウヘイ・オオタニの全てを知り尽くしている我々エンゼルスをエネミー(敵)に回すことになってしまう』という“脅し文句”をかけたとも聞く。

エンゼルスのミナシアンGM(写真:共同通信社)エンゼルスのミナシアンGM(写真:共同通信社)

 来季が契約最終年となるミナシアンGMとしてはオオタニが退団することになれば替えの効かない致命傷を負うだけに一発逆転を図る意味で口説き落としにかかったが、結果的にこれがオオタニ側の不信感と怒りを買ってしまい“大失言”となってしまったようだ。ミナシアンGMの完全な戦略ミスだったと言えるだろう」

 仮にエンゼルス側が本当に「全てを知り尽くしている」としても、日々進化し続けている大谷にとっては何の問題もないだろう。いずれにせよ不用意な発言を連発してしまったミナシアンGMとの極秘交渉破談が大谷のエンゼルス退団、ひいてはドジャース移籍への道筋を切り開く決定打となったのは否めないようだ。

 そんなエンゼルスから“卒業”し、今季輝いたア・リーグ本塁打王の初個人タイトルとMLB史上初2度目の満票MVPを手土産に名門ドジャースへと羽ばたく大谷のプレーに世界中が注目している。

【臼北信行(うすきた・のぶゆき)】
国内プロ野球、メジャーリーグを中心に取材活動を続けているスポーツライター。野球以外にもサッカーや格闘技、アマチュアスポーツを含めさまざまなジャンルのスポーツ取材歴があり、WBCやサッカーW杯、五輪など数々の国際大会の取材現場へも頻繁に足を運び、独自ネタの収集をモットーとしている。