(宮前 耕也:SMBC日興証券 日本担当シニアエコノミスト)
2023年は大きな国政選挙もなく、岸田政権が継続した。昨年12月28日の拙稿「来年の政治・経済政策展望」では、2023年に衆院解散・総選挙があるとすれば、春の統一地方選やG7広島サミットを終えた後の年央以降と指摘した。
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内閣支持率が今年半ば頃に持ち直したため、衆院解散の観測が高まったが、岸田首相は解散を見送り、その後支持率が急速に低下した。衆院解散の機を逸したのみならず、政権の継続に黄信号が灯っている状況だ。
2024年の政治は、秋に実施される自民党総裁選を軸に考える必要がある。総裁選前の春から夏にかけて、内閣総辞職や衆院解散など大きな動きが生じる可能性がある。以下、内閣支持率の動向や政治日程を踏まえ、大まかな政治シナリオを検討する。
支持率のスプレッドは危険水域のマイナス20%pt超え
【内閣支持率】
<今年5月をピークに急速に低下>
長期にデータを得られるNHK世論調査により、岸田内閣の支持率推移を確認する。内閣支持率は、昨年11月の33%を底として、今年5月に46%まで上昇したが、その後急速に低下。今年11月に29%と岸田内閣発足後の最低値を更新した。
内閣不支持率をみると、昨年11月に46%まで上昇した後、今年5月に31%まで低下したが、今年11月に52%へ大きく上昇している。
昨年後半の支持率低下は、旧統一教会を巡る問題が主因とみられる。一方、今年前半の支持率上昇は、旧統一協会を巡る問題への世論の関心が薄れる中、マスク着用義務緩和やコロナ「5類」移行などウィズコロナが進展したことが背景だろう。
今年後半の支持率低下については、様々な要因がある。夏頃にマイナンバー問題がよく指摘されたほか、保守層の離反もあったとみられる。秋以降は、物価高騰が長期化する中で、税収増還元策など経済対策に対し、様々な立場や観点から不満が生じたと考えられる。
<スプレッドは急拡大、危険水域に>
内閣支持率から不支持率を差し引いたスプレッドをみると、今年3月から6月までプラス圏で推移したが、7月にマイナス化。11月には▲23%ptへマイナス幅が急拡大し、菅政権末期の2021年8月に記録した水準に並んだ。
当時は、自民党総裁選や衆議院議員任期満了を目前に控え、菅前首相が選挙の「顔」に相応しくないとの声が自民党内で広まり、いわゆる「菅おろし」につながった。
今局面では、直近に大きな選挙を控えていないため、いわゆる「岸田おろし」が本格化していないが、現状の内閣支持率は危険水域にあると言える。
過去をみると、スプレッドのマイナス幅が▲20%ptを超えた場合、マイナス幅が拡大傾向をたどってそのまま退陣となるケースがほとんどだ。例外は小渕内閣に限られる。危険水域に入ってしまうと挽回が難しい。