内閣改造によって発足した第2次岸田再改造内閣。林芳正前外相の交代や過去最多タイの女性閣僚などサプライズもあったが、幹事長や政調会長、官房長官など政権の骨格となるメンバーが変わらなかったこともあってか、政権の支持率浮揚にはつながっていない。
今秋の早期解散説もくすぶる中、今回の内閣改造と今後の展開について、国内政治と選挙動向に精通した社会学者の西田亮介氏と、情報法制研究所の上級研究員を務める山本一郎氏が語り合う対談の第2回。
◎1回目「11月26日投開票日の可能性?河野太郎氏留任に透けて見える岸田政権の解散戦略」から読む
山本一郎氏(以下、山本氏):岸田さんって、真意をつかみにくい人ですよね。
安倍さんや菅さんの場合は「こういう政策をするんだ」「その布石を打つためにこういう人事をするんだ」というのが、わりと分かりやすかったんです。今回の人事でも、岸田さんはそのあたりが本当に分かりにくい。総理として、こだわりのポイントは分かるにせよ、全体として何をされたいんだろうなっていう。
西田亮介氏(以下、西田氏):「合成の誤謬」みたいなところがありますよね。
ご承知の通り、岸田政権の政策キーワードは「古き良き宏池会」のキャッチコピーを今風にアップデートしたものに過ぎません。例えば、「令和版所得倍増計画」。もはや誰も覚えていませんけど。
山本氏:ありましたね。
西田氏:それも、いつの間にか名前が変わって「資産所得倍増計画」になりました。「所得倍増」と「資産所得倍増」、これまったく意味が違うわけですよね。
「所得倍増」なら多くの人に恩恵があるんですが、「資産所得倍増」は、言ってみれば、資産を多く抱える山本さんのような資産家にしか恩恵がないわけです。
しかも、おそらくいまの環境だと、資産所得倍増計画だって無理でしょう。日本だって、いつ金融引き締めに入っていくのかよく分からない局面ですから。倍増なんて夢見ている場合ではないだろうと。
ここはメディアにも言いたいんですが、岸田政権が掲げている政策がどうなったのか、ちゃんと検証している報道がない印象です。古典的な新聞紙面でさえ、緊張感を持って最近の政策の推移をちゃんと追っているのかなと不安になります。
山本氏:ひっそりと看板が掛け替えられているっていうケースはありますね。
岸田政権の政策の問題点は二つあると思っています。一つは、いま西田さんがおっしゃった、古き良き宏池会の発想ということに関する問題です。