砲撃された現場を一人で歩く少女(写真:ロイター/アフロ)
  • イスラエルとパレスチナ・ガザ地区の紛争を「遠いところでの戦争」とぼんやりと見ている日本人は多い。
  • だが、イスラエルによるガザ侵攻が長引けば、日本のエネルギー輸入に悪影響を与えかねず、さらに台湾海峡問題でも勃発しようものなら、さしものアメリカも、ウクライナ、中東、東アジアの三正面作戦はそう簡単には遂行できない。
  • 資源国ではない日本は、世界の安全が確保されているがゆえに安価なエネルギーを輸入し、繁栄を謳歌できているという事実を忘れてはならない。

(山本一郎:財団法人情報法制研究所 事務局次長・上席研究員)

 イスラエルが地上侵攻を続けるパレスチナ・ガザ地区では、攻撃に巻き込まれ、地域最大の病院で新生児を含む34人が死亡しました。それ以外にも、子どもを含むパレスチナ市民の多数が犠牲になる報道が相次ぎ、世界各国でガザに連帯するデモ活動が多発しています。

 他方で、現象だけで言えば、最初にイスラエルを攻撃したのはガザ地区を実質的に支配しているとされるイスラム組織ハマスの側です。5000発以上のロケット弾などを使った攻撃をイスラエルに加え、多数のイスラエル人ほかの人質を取り、タイなどアジアから出稼ぎに来ていた人たちも、多くが襲撃で死亡しています。

攻撃を受けた救急車。完全に破壊されている(写真:ロイター/アフロ)

 この凶行の連鎖には、パレスチナによる抗イスラエル活動が激化した1987年のインティファーダなど深い歴史的背景があります。インティファーダ以降に設立されたハマスとイスラエルの間の諍いについては、読んでも読んでも読み切れないぐらいに膨大な知識と、その裏で繰り返されてきた悲劇が横たわっています。

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 ただ、日本で普通に報道を見ていると、これらの問題は「なんか戦争が起こっているね」という感じのぼんやりとした解像度で解説されているにすぎません。おそらく日本人の有権者は、この問題に衝撃を受けた人たちを除き、「なんか戦争が起こっているね」以上の理解をしていないのではないかと思います。

 ロンドンで30万人以上が参加したガザ侵攻に対する抗議デモを筆頭に、西側諸国や中東圏でもイスラエル支援と抗議が大きなうねりとなっているのに、です。

ロンドンで起きたイスラエルに対する抗議デモ(写真:ロイター/アフロ)