手が油まみれで…社員の不満が生んだ独自システム
デジタル化が中小製造業躍進の立役者となっているケースはほかにもある。
大手ガス機器メーカーの部品サプライヤーとして活躍する中央工機(岐阜県関市)は、2000年代前半に電子受発注システム(Electronic Data Interchange, EDI)を導入、2018年にはパッケージ型の生産管理システムを導入している。
新型コロナの感染が拡大した2020年からは、システムの機能を拡張して、調達部門で働く従業員のテレワークを実現した。さらにこの経験を応用して、協力工場にもシステムへのアクセス・利用権限を無償で提供している。自社だけでなく、他社を巻き込んでデジタル化を推進している企業である。
有本電器製作所(新潟県加茂市)は、鉄道車両や船舶、発電機などに用いる大型の金属部品の加工を得意としており、工場では昔ながらの旋盤やフライス盤などが活躍している。定年制がないことも特徴で、60歳以上の従業員が半数以上を占めている。
2015年、仕事の進捗を可視化するためにパッケージ型の生産管理システムを導入したが、パソコン操作が得意ではない、手が油まみれでハンディターミナルを使いにくいといった不満が相次ぎ、運用に失敗してしまう。
このときの反省を生かして、AIによる音声識別機能を備えた独自の生産管理システムをITベンダーとともに開発した。高齢の従業員が多いという事情に対応しながらデジタル化を進めている企業である。
産業用コンピューター製造のインタフェース(広島県広島市)は、創業当時からすべての製品を国内で開発・生産するという“Made in 日本”を貫き続けている。
数千万通りに及ぶ製品ラインアップを限られた生産ラインで効率的に行えるよう、調達部門や営業部門、人事部門などのデータを集約できる全社情報システムや、製品の組み立てロボットを自社開発している。これにより、生産工程のおよそ50%を自動化している。全社情報システムもプログラミング言語で自社内製している。
2021年には大分県国東市の小学校跡地を活用してインタフェースアカデミーという子会社を設立し、顧客がプログラミングからシステム構築まで自社内製できるようにサポートする事業を開始している。自社のデジタル化で獲得したノウハウを武器にして、新たなビジネスに挑んでいる企業である。
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