当初は手づくりだったネジチョコ

 こうしたなか、デジタル化に取り組んで成果をあげている中小製造業も存在する。ここからは、筆者が2022年に取材した中小製造業4社の事例をもとに、デジタル化の成果や推進のポイントを考えていく。取材した企業の概要(取材当時)は表のとおりである。

事例企業の概要(筆者作成)
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 オーエーセンター(福岡県北九州市)は、事業所向けに事務用機器や通信機器などを販売する企業として1985年に創業した。その後、洋菓子店を2店舗経営したり、地域振興事業を手がけるNPO法人を立ち上げたりするなど経営多角化を進めてきた。

 2015年には、官営八幡製鉄所の世界文化遺産登録をきっかけに北九州市ならではのお土産としてチョコレート菓子づくりをスタート、食品製造業に参入した。

八幡製鉄所の旧本事務所(写真:共同通信社)八幡製鉄所の旧本事務所(写真:共同通信社)
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 金属ネジから着想した「ネジチョコ」は、その特徴的な形状が全国から注目を浴びているほか、大企業とのコラボ商品も数多く実現している。

「ネジチョコ」は当初、手づくりで製造されていた[北九州商工会議所提供](写真:時事)「ネジチョコ」は当初、手づくりで製造されていた[北九州商工会議所提供](写真:時事)
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 このネジチョコ、実は当初は手づくりだった。だが増え続ける需要に応えるため、製造を自動化し、生産管理システムを導入。これにより、チョコレート製造は手作業のときに比べて効率が格段によくなり、生産規模は5倍に増えた。

 オーエーセンターは本業の事業所向けサービス業で培ったノウハウを生かしながら、生産の自動化・デジタル化を進めている。デジタルの力を活用し、事業を拡大している中小製造業の代表的な例と言えるだろう。