知の高い山を気がつけば登りきっていた!?

今井「この本は、オノマトペという、誰でも経験があって理解しやすいところから入っていって、そこからどんどん山を登って、言語についての抽象的な議論も乗り越えて、事例とともに論を進めていけば、『言語の本質』という頂上まで辿り着けるんじゃないかと、そういう感覚で書きました」

秋田「本当に、徐々に登っていく感じでした。実は5年前に、今井先生から『オノマトペとアブダクション推論が言語習得と進化の両輪になると考えている』と本書の構想をお聞きした時は『?』でした(笑)。でも、執筆が進む中で『こう繋がるんだ!』という気づきがあって。読者の方々と同じような感覚で、山登りを楽しませていただきました」

 実際に、一般的な新書と比較すると読者には女性も多く、年齢層も低めなのだとか。「なぜヒトだけが言語を持つのか」という壮大な問いに、多くの人が一歩ずつ近づいていったのだろう。

今井「『意識に上らないけれどできている』ことって、すごくたくさんあるわけです。そして、『できている』っていうことは、暗黙のうちに『知っている』ということなんですね。人は、特に言語においては、ものすごく豊かな知識を持っている。その暗黙知を詳らかにしたい。それが私たちの研究なんです」

 言語という高い山の山頂に立って思うことは、ことばってすごい、人ってすごい、そして知ることはものすごく楽しい、ということ。AIの進化やコミュニケーションの変化など、言葉に注目が集まる今だからこそ必読。読後、見える世界が変わる1冊である。