「ンブトゥ」って何の音?「オジルオジル」はどういう状態?

 本書では、私たちが日々なんの気なしに使っている言語というのものが、いかに豊かで、奥深く、かつ謎の多いものなのか、とにかく驚かされる。内容は非常に専門的なのだけれど、オノマトペがテーマだからか親しみやすく、「ええ〜!」「へえ〜!」の連続で、思わず誰かに話したくなる事例ばかり。

 たとえば、「フラリ」と「ブラリ」と「プラリ」。どれも「軽く出かける」様子を表すオノマトペだが、「フラリ」は目的がない感じ、「ブラリ」はのんびり楽しい感じ、「プラリ」はなんだかいい加減な感じがする。この微妙なニュアンスを、日本語話者には説明不要で伝わるけれど、改めて考えてみると、「なぜ?」である。

 外国語のオノマトペとの比較も面白い。インドネシアのカンベラ語で重いものが落ちた音は「ンブトゥ」(日本語なら「ボトッ」とか「ドサッ」)、韓国語でめまいの症状は「オジルオジル」(日本語なら「クラクラ」)など、これも「なぜ?」だ。

今井「オノマトペは、それぞれの言語の中で暗号として習慣化されているものなので、それが母語ではない人にとってはピンとこないものが多いんですよね」

秋田「韓国語と日本語は、語順や、助詞があるなど、文法自体はすごく似ているんです。が、オノマトペや、音の使われ方は、逆では? というほど違います。『あ』と『い』だったら、感覚的に日本語なら『あ』の方が大きいですが、韓国は『い』の方が大きい」

今井「それが身体化されているということですね。韓国の人にとっては、『あ』よりも『い』が大きく感じることが、一番自然なんだと。人はつい自分の母語の感じ方が人類共通のものだと思ってしまいがちですが、そんなふうには切り分けられない」

秋田「バイリンガルの人はどうなんでしょうね。2つの言語で、どちらもオノマトペがたくさんある場合…。日韓のバイリンガルの人に聞いてみたいですね。すごく面白そうです」