言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか』(今井むつみ、秋田喜美 共著、中公新書) 

3歳児のオリジナルオノマトペがすごすぎる!

 この「身体化」というのも、重要なキーワードだ。

今井「認知科学では、未解決の大きな問題があります。『記号接地問題』といって、もともとはAIの問題として考えられたもので、簡単にいうと、メロンを実際に食べることができないAIは、メロンという言葉を認識することはできても、それを『知っている』といえるのか、という問題です。そこから、『言葉を覚えたり使ったりすることに、身体経験が必要なのか』という問いが出てきます」

 確かに、言葉は私たちの中で経験とともに広がっていく。日本語なら、『あ』とか『ば』は、大きなもののイメージに結びつく。

 YouTubeの人気番組「ゆる言語ラジオ」で募集された子どもの面白い間違いエピソードの中に、秀逸なオノマトペが出てくる。ある3歳児が、ショベルカーの様子を表すのに編み出した、「ばよっ ばよっ ばよっ」である。

秋田「我々が大好きな例です(笑)」

今井「チャットGPTには思いつけないですね」

秋田「ガシャンガシャンとか、既存のものを足したようなものになるでしょうね」

今井「やはり記号接地していないので、身体性がないというか」

秋田「データを増やしていけば精密にはなっていくでしょうが、『ばよっ ばよっ』にたどり着くのかどうか」

今井「そういう、絶対にデータベースにないものを作り出せるのが、ヒトの言語の面白いところですね」