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イスラエル軍の若い兵士たち[写真:2019年にエルサレムの嘆きの壁の前で筆者撮影]イスラエル軍の若い兵士たち[写真:2019年にエルサレムの嘆きの壁の前で筆者撮影]

(文:熊谷徹)

ハマスによるイスラエルに対する大規模な攻撃は、ドイツ人たちにも強い衝撃を与えた。ショルツ政権はイスラエルを全面的に支持する姿勢を、米国と肩を並べる形で打ち出した。その背景には、ナチスによるユダヤ人虐殺を決して相対化せず、国家として永久に責任を認めるという「国是」がある。

 ドイツのオラフ・ショルツ首相は10月8日、「我々はイスラエル側に立つ。私はベンヤミン・ネタニヤフ首相と電話で会談し、強固な連帯と支援を約束した」という声明を発表した。ショルツ首相は「ハマスのテロリストたちは、イスラエル人の家に押し入り、子どもも含めて市民を無差別に殺害し、ガザ地区に連行して人質にした。その行為は野蛮であり、我々を憤激させる。このような所業を正当化するものは、何もない」と述べ、ハマスを厳しく非難した。

 さらにショルツ首相は、「私は、家族、子ども、友人を殺された多数のイスラエル市民、負傷した人々、ハマスのさらなる攻撃に怯えている人々に思いを寄せる。ドイツは皆さんの味方だ」と述べた。

子ども、女性も無差別に虐殺

 10月14日付のウォールストリート・ジャーナル電子版によると、ハマスが10月7日に始めた大規模テロによるイスラエル側の死者数は、約1300人に達し、約4300人が重軽傷を負った。イスラエルは1948年の建国以来、多くの戦争を経験してきたが、これほど多数の民間人が数日間の攻撃で死亡したのは初めてである。イスラエルのイチャーク・ヘルツォグ大統領は、「ホロコースト(ナチス・ドイツによるユダヤ人虐殺)以来、これほど多くのユダヤ人が殺されたのは初めてだ」と衝撃を露わにした。

 ハマスのテロリストたちはガザ地区を囲むフェンスを約30カ所で破ったり、小型エンジン付きのパラシュートでフェンスを越えたりして、イスラエル南部の約20ヶ所の市町村、共同農場(キブツ)などを襲った。

 ある家では、夫と妻が押し入って来たテロリストに射殺された。10歳の長男は、自室に隠れていたために生き残った。あるイスラエル人の夫婦は、2人とも軍の将校で、自宅に武器を持っていた。彼らは2人の子どもを自宅の秘密の避難室(イスラエルでは万一に備えてこのような部屋を持っている家庭が多い)に隠れさせると、自動小銃でテロリスト7人を射殺したが、自分たちも殺された。41歳の医師は、共同農場から逃げずに、傷ついた住民の手当てをしているところを、テロリストに射殺された。彼は4人の子どもの父親だった。

 ガザ地区との境界から約5キロの所にあるレイム共同農場の近くでは、音楽祭が開かれ、イスラエル人の若者たちが早朝からテクノミュージックに合わせて踊っていた。そこにAK47型自動小銃を持ったテロリストたちが襲いかかり、逃げ惑う若者たちを次々に射殺した。ある若者はスマートフォンで父親に電話し、「パパ、すぐに警察を呼んで。私の周りは殺された人だらけだ」と叫んだ。父親は「すぐに電話を切って、死んだふりをしなさい」としか言えなかった。

 乗用車のドライブ・レコーダーには、若者たちが撃ち殺される様子が録画されていた。イスラエル軍が約9時間後に到着した時、現場には264人の射殺体が残されていた。死んだふりをして助かった若者は、イスラエルのメディアに対して、「テロリストたちは、イスラエル人を撃ち殺す際にゲラゲラ笑っていた。彼らは楽しんでいた」と証言している。

 ベーリ共同農場でも多数の市民が殺され、多くの建物が放火されて焼け落ちていた。イスラエル側は、ウエブサイトで民間人が虐殺された共同農場の現場写真をネット上で公開している。女性や子どもが血まみれになって横たわっている。血で覆われた床やベッド。射殺されて歩道に放置された市民の遺体。イスラエル政府は、ネット上に流している広報ビデオの中で、ハマスとテロ組織イスラム国(ISIS)を同列に並べている。

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