イスラエルへの連帯を示すために英首相官邸はイスラエルの国旗を投影した(写真:ロイター/アフロ)
  • 英サッカーの聖地であるウェンブリー・スタジアムが、イスラエル国旗カラーにライトアップせずに猛批判を浴びた。
  • 世界各地の著名建築物でイスラエルへの連帯を示すライトアップが広がり、SNSではインフルエンサーたちが同国の支持を相次いで表明している。
  • だが、こうした「敵か味方か」の立ち位置の選択を迫る情報に安易に流されると、さらなる憎悪の連鎖を招きかねない。(JBpress)

(楠 佳那子:フリー・テレビディレクター)

 今月7日のイスラム組織ハマスによる大規模な攻撃を受けて、欧州や世界各地で象徴的な建物が、続々とイスラエル国旗色である青と白にライトアップされた*1

*1Landmarks around the world lit up in blue and white in solidarity with Israel(The Standard)

 英首相官邸にはイスラエル国旗が投影され、議会のあるウェストミンスター宮殿は青と白に染まった。米ホワイトハウスやニューヨークのエンパイア・ステートビル、独ベルリンのブランデンブルク門、仏パリのエッフェル塔なども同様のライトアップでイスラエルとの団結を示した。

 ホワイトハウスは9日、X(旧ツイッター)の公式アカウントで画像と共に「イスラエル国民に対する米国の永続的な支援と連帯の象徴」と投稿した。

 英首相官邸も8日、イスラエル旗の投影された官邸の画像と共に「ダウニング街(首相官邸の愛称)も今夜イスラエルの人々との団結を」と投稿し、スナク英首相も同日、ハマスの攻撃に対しイスラエルの防衛を「断固支援する」とXに動画をあげている。

 こうした中、日本人にも馴染みのある英国サッカーの聖地で、同国の象徴的な建物の一つでもあるウェンブリー・スタジアムが、他所と同じようなライトアップをしなかったことが波紋を広げた*2

*2FA's Israel-Gaza tribute at Wembley before England match met with criticism and support(BBC)

 BBCによると、イングランドサッカー協会(FA)はユダヤ系コミュニティや専門家より、今回の攻撃に関して、黙祷と選手による喪章の着用がふさしいとの助言に従ったという。13日のイングランドvsオーストラリア戦でこの対応が取られた。また、対戦国以外の国旗の持ち込みは禁じられた。それにもかかわらず、イスラエル旗を掲げたサポーターの画像が、タブロイド紙などに確認されている*3

*3:関連情報
WEMBLEY REMEMBERS THE VICTIMS OF THE CONFLICTS IN ISRAEL AND PALESTINE(FAの声明)
Israel flag spotted inside Wembley despite police ban after they had promised to step up their security effort for England's clash with Australia amid ongoing conflict between the Middle East nation and Palestine(Mail Online)

イングランドサッカー協会は選手の腕に喪章(黒いバンド)をつけることでハマス・イスラエル紛争の犠牲者に哀悼の意を示した(写真:ロイター/アフロ)

 この決定には、イスラエルとパレスチナ双方における罪のない犠牲者に対し中立的な敬意を表明する、という意図があったとされている。ところがこの決断に対し、お膝元のFA内や政府与党までが、猛反発を表明した。