ガザ地区へのイスラエルの報復が激しさを増している(写真:AP/アフロ)
  • 欧州委員会がイーロン・マスク氏率いるX(旧ツイッター)に対し、ハマス・イスラエル紛争に関するフェイクや暴力的なコンテンツなどが拡散されている疑いにより調査を開始した。
  • イスラエル首相アカウントが投稿したハマスの行為とされる残酷な画像が閲覧できる状態にあるなど、残忍なコンテンツが氾濫している。
  • 「ハマスが赤ん坊を斬首した」という情報が真偽が不確かなまま広がるなど、SNSがプロパガンダに容易に利用されかねないリスクが高まっており、欧州委員会とXの「全面戦争」の行方が注目される。

(楠 佳那子:フリー・テレビディレクター)

 戦闘が激化するイスラエル情勢のさなか、SNS上に氾濫する偽情報に対峙する欧州委員会が12日、テック大手X(旧ツイッター)に対する調査を開始した。欧州委員会は声明で、今年8月に適用が開始された欧州連合のデジタルサービス法(DSA)に基づき、イーロン・マスク氏率いるXに対して正式な情報開示を要請したと発表した*1

*1The Commission sends request for information to X under the Digital Services Act(欧州委員会)

 イスラム組織・ハマスによるイスラエルへの大規模な攻撃開始後、Xで違法コンテンツや偽情報、特にテロリストに関するものや暴力的なコンテンツ、またヘイトスピーチなどが拡散された疑いによりDSA違反に当たるとの指摘を受けて要請した。

 調査開始直前の10日、欧州連合(EU)のティエリー・ブルトン欧州委員はマスク氏に対し、X上で、欧州連合(EU)域内において違法なコンテンツ、また偽情報が拡散されていると警告。X上にマスク氏への書簡を公開した。

 ブルトン委員は書簡で、この要請に対してマスク氏が「早急かつ正確、そして完全な回答を24時間以内に」行うようにと、強硬な姿勢を示した。

 マスク氏はリプライでXのポリシーとして透明性を重視しているため、ブルトン委員が「ほのめかした」違法行為をX上で公開するようにと迫り、反撃した。これに対し同委員は、マスク氏はフェイクコンテンツや暴力の賛美に関するユーザーや当局による報告を熟知しているはずであり、「(有害コンテンツを規制するという)有言実行できるか否かを証明するのは貴殿次第」と突き放した。