生団連のセミナーで基調講演する小川賢太郎・生団連会長

 9月21日、国民生活産業・消費者団体連合会(生団連)は、加盟各社および加盟を検討している企業の労組幹部を招いて、生団連の活動を啓蒙するためのセミナーを開催した。

 企業の経営者か幹部だけでなく、加盟各社の社員に生団連の活動を広く知ってもらうためだという。

 セミナーを主催したゼンショーグループ労働組合連合会(ZWF)の本坊興一会長は、「大規模な経済団体や消費者団体が労組幹部に対してこうしたセミナーを開くのは初めて。参加者の反応は非常に良かった」と語る。

 日頃、労使関係という狭い分野で活動している労組の人たちにとって、生団連の活動を通して日本や世界が抱える問題点を共有することは、広い視点で労使間協議を行う上でも重要だとしている。

 セミナーでは生団連会長の小川賢太郎・ゼンショーホールディングス会長兼社長が約1時間の基調講演を行った。

 生団連を設立した経緯や自身の創業にまつわるエピソードを紹介、「将来を担う子供たちが希望を持って勉強に励める環境づくりが私たち大人に課せられた使命だ」と強調した。

 小川会長がとりわけ強調したのが、日本の国内総生産(GDP)の約7割を占める消費に関わる産業の重要性。

「安くて良い製品を作って世界に輸出するという日本の役割は終わり、いかに質の高いサービスを実現できるかが日本経済活性化のカギを握る」と語る。

 消費を主な軸とした日本経済の新成長戦略こそ、若い人たちに夢を与え、持続可能な社会を実現できると強調した。

 バブル経済が崩壊して以降、20年以上にわたり日本社会に染みついてしまった守りの姿勢を脱し、いよいよ攻めの姿勢に転じる時だとし、それには日本の企業が賃上げを通じて消費を拡大していくことが最も大切だという。

 ゼンショーグループでは今から3年前に今後10年にわたりベースアップを続けていくことを約束、この2年間で13%以上の賃上げを行っている。

「言葉だけでなく、行動で示すことが最も大切」と小川会長は言う。

 賃上げが日本経済活性化に重要な理由として、消費性向の乗数効果を指摘した。

 消費性向が高まれば加速度的にGDPを押し上げるためで、賃上げにより消費性向を高めることが日本の成長にとって最も効果があるという。

 この20年間、先進各国から大きく後れを取り、アジアの国々にも追いつき追い越されている現状を紹介、企業経営者だけでなく国民一人ひとりがこの現状を直視しする必要があるとし、消費の質と量拡大こそ最重要課題だと繰り返した。

 セミナーでは小川会長の基調講演の後、事務局から生団連が提案する日本の最重点課題および5つのテーマについてそれぞれ解説があった。

 参加者からの質問も活発で、とりわけ賃上げの意義について多くの参加者が納得していた。また、生団連への労組加盟について問われ、「検討していきたい」と回答した。

 今回のセミナーでは触れられなかったが、サービス産業の生産性向上に関する取り組みは重要と思われる。その具体例や方針などが示されると、より大きな関心を集めるに違いない。