(文:大西 康之)
東芝と東京電力。日本の経済界を牽引してきた2つの名門企業が、軌を一にして国有化されようとしている。そしてそれは、「経団連(日本経済団体連合会)の終わり」をも意味する。雇用の受け皿や利益創出の主役がサービス産業に移ったにもかかわらず、日本の政官財は重厚長大産業にしがみついてきた。だが東電、東芝亡き後の「経団連」はもはや、抜け殻に過ぎない。
大難題の「債務超過回避」
2017年3月期に製造業として過去最悪の約1兆円の赤字を計上し、6000億円を超える債務超過に陥る見通しの東芝。半導体メモリ事業の売却で1.5~2兆円の資金を捻出し、2018年3月期の債務超過を回避する計画だが、実現は極めて疑わしい。不確定要素があまりに多いからだ。
2016年4~12月期の決算をPwCあらた監査法人の「意見不表明」のまま発表した。「過去の決算から見直せ」と言っているPwCとの溝が、簡単に埋まるとは思えない。監査法人が認めない決算は、果たして決算と呼べるのか。関東財務局は4~12月期決算を受け取ったが、専門家の間からは「対応が甘すぎる」と批判が上がっている。
4月12日、国会の財務金融委員会で麻生太郎財務大臣が、近藤洋介議員(民進党)の質問に答え、「(東芝の決算について)監査法人が意見不表明というのはよく承知しているが、その理由がよく分からない。そうすると投資家の間にも、よく分からんという見方が広がり、日本の株はいい加減なんじゃないかという憶測が広がって市場が混乱する。そういった状況は避けなくちゃならん」と語った。こうなっては東芝も東証も、横車を押すような決算発表はもうできまい。
一方、世耕弘成経済産業大臣は、「東芝メモリは機微な製品を製造する技術であり、技術流出が懸念される場合は外国為替法の適用も考える」と発言し、中国、台湾、韓国への売却を牽制している。筆者の現地報告(2017年3月1日「速報:『東芝も俺が買う!』吠える鴻海テリー・ゴウ会長。中国から実況生中継!」)通り、1次入札で最高値の札を入れたのは台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業だが、「ホンハイは中国に生産拠点があり、中国共産党に近い」(経産省幹部)。
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