東芝が今後、長期にわたって原子力事業を維持していくのは困難だ

 東芝の債務超過転落がほぼ確実な状況となった。同社が今後、事業を継続していくためには、メモリー事業をはじめとする収益事業を売却し、原子力部門の損失を穴埋めする必要がある。だが、こうした財務的な措置は、当面の対症療法に過ぎない。残された原子力事業をどう進めていくのかというシナリオが必要だが、この部分についてはまったく白紙のままだ。

 政府内部では、以前から日本の原子力関連企業を統合するプランが議論されてきたが、各社の思惑などが交錯し、具体的なプロセスは進んでいなかった。

 今回の東芝の経営危機をきっかけに、原子力事業の統合や、業界再編がテーマとして再浮上する可能性がある。ただし、解決しなければならない課題が山積しており、先行きは不透明だ。

メモリー事業の外部放出は避けられない

 東芝は2月14日、2016年4~12月期の純損失が約5000億円の赤字になったと発表した。12月末時点における同社の自己資本はマイナス1912億円と債務超過の状態になっている。このまま何もしなければ2017年3月末の決算においても、約1500億円の債務超過となる見込みだ。

 損失の大半は米国の原子力事業で、現時点における減損額は7125億円となっている。一連の決算は監査法人の監査を経ていないものであり、今後、金額がさらに変動する可能性があるものの、損失額が大きく減ることはないだろう。つまり、同社は決算までの間に、この損失を埋め合わせる何らかの資本政策を打ち出す必要がある。