経営危機に陥っている東芝。虎の子の東芝メモリを買収するのはどこか?

外為法違反を持ち出してきた日本政府

 東芝メモリの1次応札が3月29日に締め切られる。この東芝メモリの買収を巡っては、当初、日本政府は無関心だった。例えば、世耕弘成経産相は1月20日、「経産省として(東芝に対する)支援策など対応を検討していない」と述べていた(ロイター、1月20日)。

 ところが、2月17日には、「(東芝メモリの技術は)わが国が保持していかなければならない技術で、雇用が維持されていくことも重要だ」と前言を撤回するような発言をした(産経新聞、2月17日)。

 そして、とうとう3月23日には、菅義偉官房長官が「(東芝メモリは)グローバルに見ても高い競争力があり、雇用維持に極めて重要。情報セキュリティーの観点からも重要性が増す」と発言し、中国、台湾、韓国企業による買収は、外為法違反として許可しない」という方針を打ち出した(日本経済新聞、3月23日)。

 外為法とは、日本や国際社会の平和・安全を維持するために、特定の貨物の輸出入、特定の国・地域を仕向地とする貨物の輸出などを制限する法律である。

 過去の事例としては、1987年に起きた東芝機械ココム違反事件が良く知られている。東芝機械は1982年から84年にかけて、ソビエト連邦(当時)へ工作機械8台などを輸出した。ところが、これらの技術が、潜水艦のスクリュー音を減らすための新型羽根の開発、製造に利用されていることを米国防総省筋が調査し、ココム(対共産圏輸出統制委員会)の規制に違反していると主張した。

 警視庁が捜査した結果、外為法違反により東芝機械幹部2人が逮捕され、東芝機械と共に起訴された。裁判の結果、東芝機械が罰金200万円、幹部2人は懲役刑となり、親会社である東芝は佐波正一会長および渡里杉一郎社長が辞職した。