久山町が密かに注目を集める理由

 そんなマイナーな存在だった久山町も、自治体関係者や移住希望者の間では知る人ぞ知る存在になっている。それは、独自のまちづくりと久山町に残された懐かしい里山風景のため。福岡市に隣接するベッドタウンにもかかわらず、美しい里山と田園風景が残されているという希少性のためだ。

 現に、幹線道路沿いには商業施設や物流施設が並んでいるが、ひとたび町の中に入れば、田んぼに小川、森や神社のある光景が広がっている。田んぼの畦では蛙が跳びはね、育ち始めた稲穂の周囲をトンボが舞う。

 もちろん、美しい水田が広がっている光景や背後に里山が控えている集落は日本全国にごまんとある。ただ、人口160万人の巨大都市圏のすぐそばに、これだけの自然が残されているというところがレアなのだ。

 そして、この自然環境と久原本家、「茅乃舎」は不即不離の関係にある。

久山町の田園風景
畦を跳びはねている蛙
猪野川の清流で川遊びに興じる人々。その大半は、福岡市など周辺の自治体から来る
「九州のお伊勢様」と呼ばれる伊野天照皇大神宮