「茅乃舎」に説得力を与えているもの
「茅乃舎だし」がヒットしたのは、河邉社主がはにかみながら言うように「おいしいから」。一般的なかつおだしとは異なり、ふくよかな甘みがある焼きあごだしは確かにおいしい。ただ、御料理茅乃舎の存在も、「茅乃舎だし」のブランドイメージに間違いなく寄与している。
厳選した地の素材をベースに、料理人の技術と技、手間と工夫を凝らした料理を提供している御料理茅乃舎。そのロケーションはほたるが飛び交う山の中、店舗は巨大な茅葺き屋根の建物である。その存在が、本物を本物たらしめている。
そして、「茅乃舎だし」をはじめとした「茅乃舎」ブランドは、御料理茅乃舎の世界観を商品化したもの。使う食材は当然、吟味しているし、素材の持ち味を活かすために余計なものは添加しない。化学調味料・保存料無添加である。
こうして考えると、「茅乃舎」のブランドストーリーに説得力を与えているのは、茅葺き屋根の料理店と久山の自然環境である。「この自然環境があるからこそ、茅乃舎が生きる。都会であれば、こんなものは合わない」。河邉社主もそう語る。
それにしても、久山町にはなぜ懐かしい田園風景が残されているのだろうか。なぜ隣接する自治体のように、福岡都市圏のベッドタウンとして開発されなかったのだろうか。
実は、これは過去50年にわたる政策の結果だ。
※第2回「高齢化率が低下し始めたのはなぜか?久山町で実現したヘルシーな人口増の秘密」に続く