2016年6月、韓国・ソウルで、従軍慰安婦問題に関するモニュメントについて説明する林玉相氏(左手前)。同奥は当時の朴元淳市長(写真:共同通信社)

慰安婦追悼施設を作った人物は実は性犯罪の加害者だった

「民衆美術家」の巨匠・林玉相(イム・オクサン)氏の過去のセクハラ犯罪が発覚し、韓国社会が揺れている。

 というのも、林玉相氏は、ソウル市・南山公園にある慰安婦被害者を追悼し、その記録を後世に伝える施設「記憶の場」の造成を総括企画し、そこに自身の作品2点を設置した人物で、慰安婦問題にも深く関わってきた経歴があるからだ。

 そんな人物が裏では性犯罪に及んでいたことが裁判で認定され、韓国全土で彼の作品を撤去する動きが広がっている。ソウル市も同様の姿勢を示したのだが、そこに韓国最大の元慰安婦支援団体である「正義記憶連帯」が反対する事態となり、韓国社会の中から「なぜ性被害に遭った女性救済のための団体が性犯罪者の作品排除に反対するのか」との声が上がっている。

 韓国メディアによると、林氏は2013年にセクハラを犯した後、正義記憶連帯から旧日本軍から性的搾取を受けた元慰安婦を称える作品を受注され、造形物を製作した。言ってみれば、性犯罪の加害者が性犯罪の被害者を称える作品を製作したわけだが、その事実が判明して以降も、正義記憶連帯は林氏の作品撤去になぜか強く抵抗した。

 1950年生まれの林玉相氏は、ソウル大学絵画科で学び、同大学院を卒業した後、フランス留学を経たエリート作家だ。ソウル大学在学時代に経験した朴正熙(パク・チョンヒ)政権の独裁と、光州教育大学教師時代に経験した5・18民主化運動に大きな影響を受けた彼は、抑圧と差別に対抗する社会批判的なメッセージを込めた作品活動で、民衆美術の不毛の地である韓国にあって「民衆美術家第一世代」として名声を確立した、韓国進歩系芸術家を代表する人物だ。