米連邦取引委員会(FTC)が近く米アマゾン・ドット・コムを反トラスト法(独占禁止法)違反で提訴する見通しだと、米ウォール・ストリート・ジャーナルや米ブルームバーグ通信が9月5日に報じた。
FTCとアマゾン、行き詰まり解消できず
FTCはこれまでアマゾンを相手取り、消費者保護を目的とした3件の訴訟を提起してきたが、独禁法訴訟は初めてとなる。2023年9月中にも提訴する見通しだという。
FTCが今回対象とするのは、外部の小売事業者がアマゾンの電子商取引(EC)サイトで商品を販売するマーケットプレイスにおける商慣行だ。これはFTCにとって、4年間にわたる独禁法調査の集大成になると、ブルームバーグは報じている。
ウォール・ストリート・ジャーナルによると、アマゾンの法務チームの上級メンバーは23年8月15日、FTC当局者らとオンラインで協議した。これはアマゾンにとって、訴訟を回避するために自社の主張を伝える最後のチャンスだった。しかし、事情に詳しい関係者によれば、アマゾン側は具体的な譲歩案を出さなかった。これにより、協議の行き詰まりは解消されなかったと、同紙は報じている。
これに先立つ23年6月、ブルームバーグはFTCがアマゾンを提訴する準備を進めていると報じていた。それによると、FTCは、アマゾンが自社の物流サービスを利用する出品者を不当に優遇したと疑っている。具体的には、「ショッピングカートボックス(Buy Box)」と呼ばれる「特権」の付与選定基準を調査している。
アマゾンの商品詳細ページは1商品に付き1ページのみ設けられる。同じ商品の出品者が複数存在する場合、ページ内右下に「こちら(の出品者)からもご購入いただけます」というリストを設置し、他の出品者を紹介している。しかし、多くの消費者は画面上に大きく表示される「今すぐ買う」や「カートに入れる」を押して購入する。つまり、出品者はこれら大きなボタンを獲得できるか否かで売り上げが大きく変わる。これが特権と呼ばれるショッピングカートボックス(Buy Box)の仕組みだ。
FTCは、どの出品者も欲しがるこの特権を、倉庫保管や配送などアマゾンの物流サービスを利用する業者に優先的に提供していないかどうかを調べている。