(写真:AP/アフロ)

 米連邦取引委員会(FTC)は、米アマゾン・ドット・コムが顧客の同意なしに有料会員プログラム「Prime(プライム)」に加入させ、かつ解約を妨害していたとして、同社を提訴した

FTC、「ダークパターン」を問題視

 FTCが問題視したのは、「ダークパターン」と呼ばれる手法。これは、クリックしやすい場所に「同意する」ボタンを配置するなど、利用者が望まない操作を行うように誘導し、自社のビジネスを有利にするデザイン手法で、近年問題を指摘する声が高まっている。一方、アマゾンは、「事実と法律の両面で誤りだ」と、真っ向から反発している。

 FTCはアマゾンが、操縦的、強制的、あるいは欺瞞(ぎまん)的なユーザーインターフェイスを用い、顧客をPrimeサブスクリプション(定額課金)の自動更新に誘導したなどと指摘し、2023年6月21日、米ワシントン州シアトルの連邦地裁に提訴した。

 FTCは訴状で次のように指摘している。例えば、消費者はオンラインで商品購入手続き中、何度も月14.99ドルのPrimeに加入するよう促された。多くの場合、Primeに加入せずに商品を購入する選択肢を見つけることは困難だった。一部のケースでは、取引を完了するために押したボタンは、それを押すことでPrimeへの加入に同意するものだったが、そのことを明示していなかったという。

 FTCは解約しにくい状況になっていたことも問題視した。解約するためには、何度も辛抱強くページを切り替える必要があったという。加えて、顧客が解約を試みると、自動でリダイレクトされ、割引料金でサブスクを継続するよう促されたり、解約を選択しないように促されたりする場面に遭遇したという。

 FTCによると、アマゾンは長年にわたり、1、2クリックの簡単な操作でPrimeに加入できるインターフェースを導入してきた。その一方で、解約手続きでは、4ページにわたる6度のクリックと、15に及ぶ選択肢の検討が必要な仕組みを導入していた。この手法はアマゾン社内で、長大なトロイア戦争について書かれた叙事詩にちなみ、「イリアス」と呼ばれていたという。FTCは、この「迷路のような」手順は、顧客がPrimeを解約するのを不便にし、混乱させるように意図的に設計されたものだと指摘した。

 訴状によると、アマゾンはFTCが提訴する前の23年4月、一部会員の解約手続きを刷新した。しかしFTCはこれについて、アマゾンの方針が「法的に弁護し難い」ことを同社は知っていた、と主張している。