米アマゾン・ドット・コムによる米映画製作大手メトロ・ゴールドウィン・メイヤー(MGM)の買収を、反トラスト法(独占禁止法)を所管する米連邦取引委員会(FTC)が審査すると、米ウォール・ストリート・ジャーナルなどの米メディアが6月22日に報じた。
アマゾンにとって過去2番目の大型買収
FTCでは先ごろ、米コロンビア大法科大学院のリナ・カーン准教授(32)が委員長に就任した。同氏はIT大手に対する規制推進派として知られる人物。アマゾンは今後、FTCの厳しい調査に直面することになるとウォール・ストリート・ジャーナルは報じている。
アマゾンは2021年5月、MGMを84億5000万ドル(約9400億円)で買収することで合意したと発表した。アマゾンにとって17年に137億ドル(約1兆5200億円)で傘下に収めた高級スーパーマーケット「ホールフーズ・マーケット」に次ぐ過去2番目の大型買収となる。人気スパイ映画「007」シリーズなどで知られるMGMを取り込み、米ネットフリックスや米ウォルト・ディズニーなどのライバルがいる動画配信市場で競争力を高める狙いだ。
カーン氏、アマゾン批判の論文で脚光
一方、カーン氏は反トラスト法・競争法の専門家で、米議会下院司法委員会反トラスト小委員会の法律顧問を務めた経験もある。同小委員会は20年10月にグーグル、アマゾン、フェイスブック、アップルのいわゆる「GAFA」を対象にした同法調査報告書をまとめており、カーン氏はこれに携わった。
同氏は米エール大法科大学院の学生だった17年にアマゾンによる競争阻害を新たな枠組みで判断すべきと提言する論文「アマゾンの反トラスト・パラドックス」を発表。独占状態を抑制できない現行法の問題点を指摘して注目を浴びた。
FTCは米司法省と共に独禁法を所管している。19年に互いの監督領域を調整し、FTCがフェイスブックとアマゾンを、司法省がアップルとグーグルを担当することを決めた。これに伴いアマゾンによるMGMの買収もFTCが担当することになった。
ウォール・ストリート・ジャーナルによると、現在のMGMは比較的規模が小さな映画製作会社。通常であればこうした審査は不要だった。だがM&A(合併・買収)の相手がアマゾンとなると話が異なる。当局や政界はますます巨大化するIT大手の大型買収に警戒感を強めているという。