MGMとアマゾンのロゴイメージ(写真:ロイター/アフロ)

 米アマゾン・ドット・コムは2021年5月26日、米映画製作大手メトロ・ゴールドウィン・メイヤー(MGM)を買収することで、最終合意に達したと明らかにした。負債も含む買収価格は84億5000万ドル(約9200億円)。人気スパイ映画「007」シリーズなどで知られるMGMを傘下に収め、競争力を高める狙いだ。

1924年設立の老舗映画スタジオ

 1924年設立のMGMは007シリーズに加え、「ロッキー」や「雨に唄えば」「羊たちの沈黙」「レイジング・ブル」「十二人の怒れる男」といったクラシック作品を含む4000本の映画タイトルを持つ。また、「ファーゴ」「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」「ヴァイキング ~海の覇者たち~」といった1万7000本のテレビシリーズも手がける。

 買収後は、アマゾンのオリジナル番組制作部門「アマゾン・スタジオ」と連携し、MGMの事業を後押しするとしている。

 この日開いた株主総会で、7月5日にアマゾンのCEO(最高経営責任者)を退任すると明らかにしたジェフ・ベゾス氏は、買収の理由について「テーマはとてもシンプルだ。MGMは人々に愛されている膨大な知的財産を持っている。MGMとアマゾン・スタジオの才能あふれる人材でこれら知的財産を21世紀らしく再考・発展させる」と述べた。

 米ウォール・ストリート・ジャーナルによると、アマゾンは過去1年半にわたりMGMと断続的に協議していた。一時は、新型コロナの影響で劇場公開が何度も延期されている新作映画「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」の動画配信について協議した。

 昨年、動画配信「プライムビデオ」やアマゾン・スタジオ担当副社長のマイク・ホプキンス氏がMGMのケビン・ウルリッヒ会長にコンタクトを取り、M&A(合併・買収)の話が持ち上がった。その後しばらく膠着状態に入っていたが、5週間前にアマゾンが80億ドル超の買収金額を提示し、協議が動いた。すぐさまMGMの取締役会が承認し、5月24日に最終合意契約を締結した。翌日の25日は、ミネソタ州で黒人のジョージ・フロイドさんが死亡した事件から1年を迎える日だったため、発表を26日まで待った。

再編進むメディア・エンタメ業界

 メディア大手やテクノロジー大手が動画配信でし烈な競争を繰り広げる中、映画などのエンターテインメント業界はその激しい渦に飲まれている。