米アマゾン・ドット・コムが米映画制作のメトロ・ゴールドウィン・メイヤー(MGM)の買収に向けて交渉中だと、英フィナンシャル・タイムズなどの欧米メディアが5月18日までに報じた。
「007」「ロッキー」「ターミネーター」の映画会社
MGMは人気スパイ映画の「007」や、シルベスター・スタローン主演の「ロッキー」、アーノルド・シュワルツェネッガー主演の「ターミネーター」などで知られる。関係者は、買収価格が90億ドル(約9800億円)になる可能性があると話している。
フィナンシャル・タイムズによると、新型コロナウイルスの影響で映画興行が苦戦を強いられる中、MGMも大きな打撃を受けている。新作映画の「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」は、当初2020年4月に劇場公開する予定だったが、これまでに4回延期した。その間、米動画配信最大手のネットフリックスが配信権獲得を目指しMGMと協議したものの、金額が膨大だったため交渉は決裂した。
アマゾン、エンタメ事業強化で新部門
一方、アマゾンはエンターテインメント事業の強化を図っている最中。先ごろはかつての幹部だったジェフ・ブラックバーン氏が、20年ぶりにアマゾンに復帰し、新設部門「グロバール・メディア&エンターテインメント」の上級副社長に就任することが決まった。動画配信「プライムビデオ」やゲーム動画配信「トゥイッチ」などのコンテンツを統括するという。
アマゾンは昨年、プライム会員向け動画・音楽コンテンツの制作・配信に110億ドル(約1兆2000億円)を投じた。19年の78億ドルから4割増えている。先ごろは米プロアメリカンフットボールNFLと、木曜夜に開催される「サーズデーナイトフットボール」(TNF)を独占配信する契約を結んだ。こちらの権利料は年10億ドルとみられている。
フィナンシャル・タイムズの5月18日付記事によると、MGMが持つ映画やドラマのタイトル数は約4000本。同社を買収すれば、アマゾンの動画配信事業は急拡大すると報じている。同時にこの市場の再編が急速に進む可能性があるという。その背景にはコロナ禍に伴う競争激化があるようだ。