文=岡崎優子

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製作費2億ドルの超大作が配信に!

 1998年に公開され、世界興行収入3億ドルの大ヒットとなったディズニー・アニメーション作品『ムーラン』。その実写版が製作されると報じられたのは2015年に遡る。それから5年。当初、2018年11月2日に全米公開予定だった本作の製作は遅れに遅れ、2019年12月20日、そして2020年3月27日へと延期された。

 さらにコロナ禍の影響で7月24日、8月21日と公開日が変更され、ついには無期延期を発表。アメリカをはじめ、カナダ、ニュージーランド、欧州では公開を断念、ディズニーのストリーミングサービス「Disney+」での有料配信が決まった。

 一方、中国、シンガポール、マレーシアなどアジア地域で劇場公開を決定したことから日本での公開も期待されたが、9月4日より追加料金でのプレミア配信に。2億ドルの製作費がかかった超大作だけに、やはり大画面で観たかった!

 しかも昨年以来、『ムーラン』にとってありがたくないニュースばかりが取り上げられている印象は否めない。それでも配信・公開前は美しい映像美、手に汗握る戦闘シーンなどが世界の評論家たちに高評価を受けていたのも事実。それだけに、バイアスがかからない状態で、純粋に映画を楽しみたい!と思う人も多いだろう。ところがいったんネガティブな要素が噴出すると、批判ばかりが目立つのは、いかんともしがたい。だからこそ、話題の『ムーラン』を見ようと思った。

 

映画に望まれた伝説のヒロイン

 そもそも「花木蘭(ムーラン)」とは、中国人なら誰もが知っているヒロイン。南北朝時代の北魏の民謡「木蘭辞」が脚色されて広まった伝説である。北方民族の侵略に対抗するため、各家庭から男一人を徴兵するよう朝廷から命令が下る。病弱な父に代わりムーランが男装して入隊。戦場での功績から朝廷は高官のポストを用意するが、ムーランは固辞して故郷へ戻り女性に戻る。本作ではさほど長い期間に見受けられないが、もともとのオリジナルは出征から退役まで、12年の歳月を描いている。

 ヒロインの花木蘭はこれまで何度か映画化された、映画化にはもってこいのキャラクター。1927年のサイレント映画『花木蘭従軍』はじめ、1939年『木蘭従軍』、1941年に上演された女性歌劇『木蘭従軍』など。そして最も有名なのは、1998年のディズニー長編アニメーション『ムーラン』だろう。本作はアカデミー賞音楽賞(ジェリー・ゴールドスミス)にノミネート。2004年には続編がOVAとして製作された。

 その後も2009年にヴィッキー・チャオ主演、チェン・クン、フー・ジュン、ジェイシー・チェン、ユー・ロングアンなど人気俳優が出演した香港映画『ムーラン』がある。同作は長春映画祭、百花奨、上海映画批評家賞などで最優秀主演女優賞を獲得。香港版アカデミー賞と言われる金像奨にもノミネートされるなど、ヴィッキー・チャオのムーランは凛々しく、壮絶な戦闘シーンを果敢に演じていた。日本では残念ながら未公開だったが、2012年にDVD化されている。