中国のこだわりを意識!?

 そして再びディズニーが手掛けたアニメーションの実写版『ムーラン』にはコン・リー、ジェット・リー、ドニー・イェンなど大物中華スターが出演。主演のリウ・イーフェイは中国系アメリカ人で、ディズニーが1年かけて選出した候補者1000人から抜擢された。明確な英語が話せ、武術ができ、スター級の素質がある人材を探していたとあり、イーフェイは乗馬、剣術、武術、戦闘シーンの9割をスタントなしでこなしている。女性ならではの軽量級アクションは見ていて清々しい。しかも、彼女は香港映画版『ムーラン』のオーディションにも挑戦していたというから、この役にかける思いは半端なかっただろう。その覚悟が随所に見える。

監督は『クジラの島の少女』(02)のニキ・カーロ。製作費1億ドル超のディズニー映画の女性監督としては、エヴァ・デュヴァーネ監督に次いで2人目

 冒頭、ムーランの故郷が映し出される。円形の集合住宅で逃げ出した鶏を追う幼いムーラン(子役のクリスタル・ラオが素晴らしい! 将来が楽しみ)。鮮やかで目にも楽しい舞台美術がこれから始まるムーランの物語を盛り上げてくれる。そして、はねっかえりの彼女を疎ましく思う村人たち。女はつつましく素晴らしい夫に嫁ぐことが名誉とされている時代にあって、彼女は戦士として類まれな才能を隠して生きなければならなかった。

 足の悪い父親に手ほどきされ、ムーランが武術を磨くシーンはさすがディズニー映画! 『スター・ウォーズ』シリーズのジェダイを彷彿とさせる。まさにフォースに導かれ、父親の代わりに自ら戦地へと赴き、訓練の場においても、戦闘においても隠していた才能が溢れ出る。やはり彼女は選ばれるべき戦士だったのだ。

 この実家の様子、見合いの化粧などが史実と異なるとの意見から冒頭シーンは撮り直しされたというが、それだけに見事なオープニングだった。だが、中国ではそんなに史実重視でドラマが作られるものなのか。なんでもありの中国時代劇ファンタジーが大人気なのだから、そこは目をつぶってもよさそうなのに。

アニメーション版では入隊の際、髪を切っているが、実写版は長髪のまま。男性の長髪は昔の中国では一般的だったのでOKとなった