「大文字焼き」ではなく「送り火」
送り火の起源については平安時代に空海が始めたとも、室町時代に足利義政が考案したとも言われているが、定説はない。
送り火でもっとも有名な「大文字」の由来は、仏教における万物を構成する5つの大元素「空・風・火・水・地」に由来する。この「五大」(「空」を除いて四大、「識」を加えて六大とも)から「大」の字が取られたとする説や、そもそも「人」を象っており、そこから転じて「大」となったとの説もある。
私の寺からは「鳥居形」が見えるが、燃え盛る炎は幻想的であり、迫力に満ちている。翌朝は山に登って燃え残りの炭を粉末にして服すると、持病が治るとの言い伝えがある。
他府県の人は送り火を一括りにして「大文字焼き」と呼ぶことがあるが、京都人は嫌がる。あくまでも聖なる宗教行為としての「送り火」にこだわるからである。
京都では送り火が見える立地のマンションなどは、不動産価値が高くなるという。別のマンションの建設などで送り火が見えなくなった場合、クレーム対策として、屋上を近隣の住民に開放するということもよくある。
その京都人のアイデンティティの象徴ともいえる五山送り火。8月16日の8時過ぎから、順次点灯される。しかし過去には、2度の断絶の憂き目に遭っていた。