「積立王子」として知られた中野晴啓氏が6月28日、自ら創業したセゾン投信を去りました。親会社クレディセゾンの創業者で会長CEO(最高経営責任者)の林野宏氏との経営方針を巡る対立が背景にあるとみられています。事実上の解任です。
中野氏は、相場の変動に左右されにくい「長期・積立・分散」という投資手法を積極的に啓蒙し、多くの個人投資家から支持されてきました。折しも、2024年からは中野氏の運用哲学が反映されたかのような、積み立ての投資枠などが拡充された新たなNISA(少額投資非課税制度)が始まります。
中野氏はなぜ解任され、これから何を目指すのか。資産運用のあり方を問い直す新連載「中野晴啓の正しい投資」をスタートします。(JBpress編集部)
私が17年前に立ち上げたセゾン投信を追われることをメディアが報じてから、多くの方々に「大丈夫ですか」とお声をかけていただきました。それが最近、「おめでとうございます」と祝福してくださる方が増えたように感じています。自由にやりたいことを追求できる立場を楽しめ、と激励してくださっているのでしょう。
これまで大切に育ててきた子どものような存在を突然失い、自らの存在価値を完全に否定されたときは、現実を受け入れられずにいました。しかし、今はすがすがしい心境です。親会社のしがらみから解放されただけではありません。私が目指してきた「長期・積立・分散投資」という世界が、多くの個人投資家の皆さま、そして金融業界の仲間から支持されていると、改めて確信できたからです。
私はもう一度、ゼロから再出発します。今、新たな資産運用会社を設立する準備を急ピッチで進めています。
来月には還暦を迎え、体力的にも決して容易ではないチャレンジとなるでしょう。皆さんの目にもそう映るようで、「お体にはくれぐれも気をつけて」と心配してくださいます。
それでも、残りの人生を新たな事業に全力で注ぎ、これまで私を信じてくださった方々の期待に応えていく覚悟を決めました。私がこれから何を目指していくのか、JBpressで始めるこの連載でお話ししていこうと思います。
まずは何が起きたのか、改めて振り返ることから始めます。