「あなたは邪魔だ」突然の退任宣告

　4月5日、クレディセゾン創業者で会長CEOの林野宏氏に呼び出されました。林野氏とは時折ランチを共にしており、その日も約束がありました。最近は会うたびに「早く会社の規模を大きくしろ」などと指摘されていたので、似たようなことを言われるのだろうと思っていました。

　しかし、それは甘い見通しでした。サンシャイン60（東京・池袋）の52階にある林野氏の部屋で、唐突に「あなたが邪魔だ」「あなたがいたままでは、セゾン投信は大きくなれない」と一方的に退任を告げられた※のです。

※クレディセゾンはJBpressの取材に対し「面会は林野と中野氏のみだったため、同席している者がおらず、実際のやり取りについてはお答えすることができかねます」と回答した。クレディセゾンとセゾン投信の見解については、記事の最後に掲載しています

　衝撃を受けました。セゾン投信という会社の価値を高め、その源泉の多くの部分は今も私自身にある、と自負していたからです。

中野 晴啓（なかの・はるひろ）　中野晴啓事務所代表、セゾン投信前会長CEO
1963年、東京生まれ。明治大学商学部卒業後、87年クレディセゾン入社。セゾングループの金融子会社にて債券ポートフォリオを中心に資金運用業務に従事した後、投資顧問事業を立ち上げ運用責任者としてグループ資金の運用のほか外国籍投資信託をはじめとした海外契約資産などの運用アドバイスを手がける。2006年セゾン投信を設立、07年4月社長、20年6月より会長CEO就任、23年6月退任。（写真：村田和聡）

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　創業してから、短期的な相場に左右されない長期・積立・分散という投資スタイルの重要性を世間に訴えてきました。地道に全国を回り、個人投資家の皆さんを相手にセミナーを開催して、命の次に大切なお金を少しずつ預けていただきました。メディアにも積極的に顔を出して、投機（ギャンブル）ではない、一人ひとりの人生、そして社会を豊かにする資産運用を根付かせようとしてきました。「積立王子」という親しみのあるニックネームもいただきました。

　運用残高は約6000億円となり、来年から始まる新たなNISAの制度設計にも少なからず影響を与えられたと考えています。私が世間に問いかけてきた長期投資が、新NISAという枠組みでようやく本格的に普及するかもしれないという矢先でした。

　そんな認識が油断につながってしまったのだと思います。林野氏との方向性の違いはここ数年で埋め難いものになっていました。それでも、このタイミングで私を追い出すことはないだろうと、たかを括ってしまっていたのです。