中国原発もトリチウムを放出

 この中国原発によるトリチウム大量放出は、福島の処理水に大きな声を上げているのであれば、極めて由々しき問題になってしかるべきだろう。ところが李在明(イ・ジェミョン)代表をはじめとする野党の議員たちの声が上がった記憶はない。

 しかも報じられたのは21年のデータであり、その前後でも放出されているだろう。そのトリチウムが流れ込んでいる黄海産のイシモチと天然塩を、私も含めて韓国に住む人は喜んで食べてきた。

 この話を韓国人にしてみると「知らなかった」というのが大半である。それに知ったところで、「韓国をいつも敵視している中国のことだし、どうでもいい」という返答が多かった。

韓国・ソウルの魚市場。福島第1原発の処理水への懸念は高まるが、中国の原発による影響についてはあまり語られることはない(写真:ロイター/アフロ)

 ではどうして福島のことが気になるのかというと、「よく報道されているから」という答えが最も多い。「日本は中国よりも身近だ」とか、「日本に行く予定もあるし、日本のものを食べる機会がある」という回答も少なくなかった。

 韓国で福島の海洋放出反対の声が高まったのは、日韓関係改善を劇的に進めている今の尹政権下である。ノージャパンからゴージャパンへ移行し、そのぶん余計に気になっているとも言える。