- 韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が、祈祷術に頼って政策を決めていたという疑惑が浮上している。
- 大統領官邸の移転に関しては警察が捜査に乗り出し、風水学者の関与が明らかになった。
- 福島原発処理水の海洋放出に関して尹政権の対応を批判していた野党が、ここぞとばかりに政争のネタとして取り上げている。
(平井 敏晴:韓国・漢陽女子大学助教授)
韓国の尹大統領が祈祷術に頼って政策を決めていた。
そんな疑惑が韓国をにわかにざわつかせており、政界では与野党を巻き込んで騒ぎになりつつある。
祈祷術を行う疑惑の人物は誰なのか。どうやら複数いるらしい。
当初挙げられたのはチョンゴンという人物である。丸みのある面長で目が細く、朝鮮時代から時空を超えて現代に姿を見せたかのような風貌だ。口ひげもあごひげも長く伸びた古典的な風格で、朝鮮時代から時空を超えて現代に姿を見せたかのようだ。それゆえに人によっては神秘的な印象をもつかもしれない。
実際に韓国メディアはチョンゴン氏のことを「巫俗人」として紹介している。「巫俗人」とは祈祷や儀式を行い霊魂が憑依して超越者の言葉を伝えたり、未来を予測したり、あるいは病を治したりする能力を持つ。日本語では霊能者や呪術師、英語ではシャーマンという。
チョンゴンの名を公にしたのは、元軍人で前任の文在寅(ムン・ジェイン)政権下で国防部のスポークスマンを務めたブ・スンチャンである。ブ氏が今年2月に出版した『権力と安保』のなかで尹大統領との関係を告発した。
尹大統領は大統領就任式の日に大統領官邸を青瓦台から龍山区に移転し、新官邸の近くにある国防部の庁舎内に大統領執務室を設置した。ブ氏によればこの一連の過程においてチョンゴン氏が関与したというのだ。