織田信長とは本当はどんな武将だったのか――?
日本史上もっとも有名な武将の解釈が揺れている。
乃至政彦氏が一次史料に基づき歴史の「復元」を試みるコンテンツ「歴史ノ部屋」で、歴史研究者の河合敦氏と対談。
時代によって評価の変わる歴史上の英雄たちの人物像について論じる。
(本コンテンツは「動画【乃至政彦×河合敦】時代によって変わるヒーロー像」を再編集したものです)
織田信長の評価は、革命児から「凡人」に…!?
乃至 河合先生の著書『面白すぎる!日本史の授業』(あさ出版)のなかで、「織田信長像が過渡期にある」と書かれていました。
歴史像、歴史人物のイメージが、今と昔では、全然違うと。
河合 戦国時代は、特に変わってきています。
信長は革命的な人物で、革新的な政策を推し進めたということだったのですが、現在ではむしろ、「信長は後進的な人物だった」「信長だけが鉄砲を大量運用していたわけではない」「信長は天下統一を目指していなかった」といった評価に変わってきている。
乃至 かつて信長の魅力だったものが、ほぼ全否定されていることになりますね。
河合 それが最近の傾向だと思うのですが、逆に、新史料が見つかるなどして、「やはり信長は、凄かった」といったことは、ないのでしょうか。
乃至 解釈の仕方次第ではないでしょうか。
以前までは、信長は、革新的で斬新なアイデアを実行するというところが、評価されていました。そして実際に、天下統一まであと一歩のところに迫ったという事実があります。
この要因が、信長の革新的なビジョンにあったといわれていました。しかし、そうでないとすると、何がここまで信長を大きくしたのかということを、あらためて問いなおす必要があります。
信長という人物を見直す、時代背景を見直すことで、以前までとは違う形で、「やっぱり、信長は英雄だな」という見方が出てくるのではないかと、個人的には思います。
河合 いまは信長は普通の人だったということになってきていますが、ではなぜ信長は、他の戦国大名から抜きん出ることができたのか。そこが納得できる研究がない気がします。
乃至 単に、「昔のイメージとは違いますよ」ではなくて、新しい見方を提示してほしいですね。
河合 子どもたちは、たぶん、ショックでしょうね。信長は、英雄なのにねえ。
乃至 ドラマや漫画などでイメージする信長像とは、「ちょっと、違うな」という感じになってきていますよね。