尹政権の誕生によって、なんとなく日韓が仲良くなったように、みんなが勝手に思っているが、韓国が原因だった問題の数々は、何も解決していない(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
  • いったんは収まったように見えた福島第1原発の汚染水問題だが、再び韓国内で盛り上がり始めている。
  • 韓国の原子力専門家は科学的な知見を基に「心配ない」と発言しているが、非論理的な声にかき消されている。
  • お受験ブームの韓国では毎月数十万円を子どもの塾につぎ込むが、なかなか学問レベルは上がらないようだ。

(立花 志音:在韓ライター)

「お母さん、韓国で理系の勉強してる人ってどうなんだろうね」

 夜10時に塾から帰宅した息子は、部屋に入る前に制服を脱ぎながら、ボソッと口にした。6月も半ばになると、韓国の高校生は完全に期末試験モードになる。梅雨も来ていないのに、いつの間にか夏日の毎日だ。

「どういう意味? 文系であれ理系であれ、韓国で学問っていうのはあまり期待しちゃだめよ」

 高校2年生のまとまらない思考と、もやもや感が盛られた不思議な質問に、あえて筆者はバッサリ切るような答えをした。

「フクシマ原発の汚染水が、ぐるっと回って来るってみんな信じてるよ。いつかお母さんが言ってた話あるじゃん。海流だっけ。みんな知らないのかな。ねぇ、アイスクリームか何かないの?」

 冷凍庫を開けてゴソゴソと探っている。

 2年前の2021年の秋、韓国では塩の価格が暴騰した。その時、韓国人たちは福島原発の汚染水のせいで塩が作れなくなって、塩の値段が上がったと大騒ぎだった。

 実際には、文政権が韓半島南西部の塩田を潰して太陽光パネルを設置したことが原因だった。

 しかもその当時は、福島から処理水は放流されておらず、全くの濡れ衣を着せられていたのだ。筆者がひとり騒いだところでどうしようもないので、その時は笑い飛ばした。

 その当時、「福島ってあっち側(太平洋)だよね。そこの水が、こっち(東シナ海)にそんなに早く来るのかなぁ」という息子の鋭い視点をきっかけに真偽を調べ始めたのだった。

 日本にいると普通に思い付くようなことでも、韓国に住んでいると、世論がうるさすぎて思考がずれることが少なくない。

塩の価格高騰が福島の原発処理水の影響だと語る韓国人の地理感覚

 その後、処理水の放出に関する話題はいったん収まったように見えたのだが、ここ数カ月で再び異常な盛り上がりを見せている。