「ChatGPT・趙」。レポートを書くことを仕事としている筆者が、このように署名する日はそう遠くないだろう。米OpenAIが開発した対話型AI「ChatGPT」の話題が連日のようにニュースに登場するようになっているが、今回はこの分野での中国企業の動向を紹介したい。
対話型AIは従前の技術を生かし自前で開発
生産性向上に貢献する可能性が大きいとみられる一方で、悪用の危険性や倫理違反、フェイクニュース・偽情報の拡散、著作権侵害といったリスクも指摘されているChatGPT。こうした生成の活用で生産性を高めようとする行政機関や企業が増える一方で、プライバシーの侵害だとして利用を一時禁止する国も出ている。
EUでは生成AIを規制する新法を「早期に施行する」との方針が示され、米国でもその安全性について議論になっている。AI分野の第一人者でGoogle副社長も務めたジェフリー・ヒントン氏が米グーグルを退職し、進化を続ける生成AIの危険性に警鐘を鳴らしたのも、大きな話題になった。
そうした中、6月9日から10日にかけて、中国の北京で「北京智源人工智能研究院(BAAI)」主催のAI大会が開催された。米OpenAIのサム・アルトマンCEOがオンラインで登壇、中国での初講演を行ったが、そこで話されたのが「今後10年間、より精度の高いAGI(Artificial General Intelligence、汎用人工知能)が生まれるかもしれず、AIのリスク軽減について米中協力が必要」ということだ。
ChatGPTが発表されてから、中国の関連業界はこの新たな潮流に乗り遅れないように本格的に動き出している。大手テック企業はこぞって、従前の技術蓄積をもってAIGC(AI生成コンテンツ)やLLM(Large Language Model、大規模言語モデル)に取り組み、類似(対抗)サービス、いわゆる「中国版ChatGPT」を相次いで発表。株式市場も年明け以降、AI関連株が活況を呈している。
ベンチャー企業による新規参入も盛んである。中でも注目されているのが「光年之外」。フードデリバリー大手「美団」の創業メンバーだった王慧文氏が5000万ドルを投じて立ち上げた企業で、「中国のOpenAI」を目指すという。
中国系モデルは多数あるが、精度向上が課題
4月末時点で公開された中国系の大規模言語モデル(LLM)をまとめたのが下の図だ。米マイクロソフトのブラッド・スミス副会長は4月下旬に日本経済新聞の取材で「高度なAIの開発では米国勢だけでなく、中国のBAAIや百度(バイドゥ)、アリババ集団がいることを頭に入れておくべきだ」と述べているが、この図が示すように、中国にはこれら企業以外にも競合する企業は多くある。