
シェア世界一を誇るカーエアコン用コンプレッサー。その製造工程における不良を減らすとともに、作業工程を改善する。これらの目標に向けた、豊田自動織機の社員らの歩みを追っている。独シーメンスと協業し、人工知能を始めとする先端的なデータ解析技術を社員らは手に入れた。ところが、いざ人工知能を働かせてみるとうまくいかない。第3回は、机上検討と現場の実践の差異がどのようなもので、プロジェクトのメンバーたちがその差異をどう埋めて成果を出してのかを伝える。この事例は、人工知能を駆使するために、いかに人間側の準備が重要であるかを教えてくれるものだ。
■第1回 「乾いた雑巾」をなお絞ることから始まった豊田自動織機のDX
■第2回 世界最先端の工場で受けた衝撃、豊田自動織機のDXに火を付けた協業相手
■第3回 「予想外のAI精度」を克服、豊田自動織機がDXで実現したダイカスト不良予測(今回)
■第4回 豊田自動織機に学ぶ、「DX成功事例」を社内で横展開するには何が必要か
人工知能が想定通りに働いてくれない・・・
豊田自動織機の社員たちは、カーエアコン用コンプレッサーの製品不良を減らし、ライン作業者の工程を改善すべく、協業相手である独シーメンスの人工知能(AI)を駆使しようとした。ところが、だ。当時のグループ長で、社内のデジタルトランスフォーメーション(DX)の実務を担う井上雅昭氏が証言する。
「AIで製品不良を予測して低減することを目論み、概念実証(PoC)をしました。効果的に不良を減らせそうだとなりました。ところが、AI装置を生産設備に取り付けて稼働させてみると、計画通りになりません。予想の半分さえ不良は減りませんでした。ショックでした」
机上検討と現場の実践とで、どうして差異が生じたのか。その差異をどう埋め、人工知能の不良予測のパフォーマンスを上げていったのか。井上氏らは3つのポイントを話す。
