吉田:ずいぶん前に、ある地方の路面電車が存続か廃止かという分岐点に立ったことがありました。結局は廃止となってしまうのですが、私が現地に視察に行ったところ、存続を訴えるグループの署名活動には盛り上がりが欠けていたようにも感じました。市民が賛意を示していなかったのですね。

 これは、運動を始めるのが遅かったのかもしれません。住民がもうあきらめていたのだと思います。もっと早くに違う動きをしていれば、路面電車が運転されるほど沿線人口がある地域なのだから、鉄道が残される可能性はあったと思います。

「レストラン列車」、地元への還元効果には疑問

──茨城県でも鹿島鉄道のように、それなりの沿線人口を抱えていながら廃止となったところもあります

吉田:鹿島鉄道の場合は、会社が廃止の方向を打ち出した時に、ちょうど沿線自治体の市町村合併の話があって、行政はそちらにかかり切りになっていたというタイミングの悪さもあったように思います。行政が違う動きをしていれば、廃止にならなかった鉄道は全国にあるように感じます。

──吉田さんは、鉄道会社が目立つイベントを開催することは、必ずしも収益にはつながらない、鉄道存続の特効薬とはなり得ない、とお話しになっています。

吉田:情報の発信、活性化策は現代の鉄道会社には必要不可欠ですが、例えば「レストラン列車」のようなものを運転して、その利益をどこまで地元に還元できるのだろうか?ということです。

 食材を用意して、お客様を誘致して、運転の費用も、要員の手配も必要です。来てもらってもそのお客様が果たしてリピーターになってくれるだろうか。そこまで勘案すると、イベントの採算性は低いように感じます。