吉田:もしも、通学の輸送にバスを運転するとなると年間に1億円の費用が必要だったという試算がありましたから、どちらが良いのかは明らかだと思います。
──浮いた1億円が鉄道に入れば良いけれど…
吉田:さすがにそこまでは言えません(笑)。少子化が進んで全国で学校の統廃合が進められています。富山市では、市が統合案を出したところ、住民からの大反発があったそうですが、そこをうまく考えました。新しい学校を鉄道の沿線に建て、鉄道を利用することで安心して子供を学校に通わせることができるようにしたことで、親御さんの理解を得たのです。
三セク化、当初は消極的賛成も多かった
──ただ、住民の希望というのは、どうしても対立しがちです。その調整が鉄道会社の仕事かというと…
吉田:違うかもしれませんね。ひたちなか市の例で言いますと、民営だった鉄道を第三セクター鉄道として残すかどうか決議をした時に、市議会は満場一致で残すという決議をしました。
実際にはこのうちの半数近くは、消極的賛成だったといいます。つまり、鉄道を残すことに反対するのは良くないという考え方です。
けれども東日本大震災が起こった時には、本当の意味での満場一致で、被災した鉄道を元に戻すことが決議されました。
それは、住民の方や行政に携わる方の、ひたちなか海浜鉄道に対する評価の現れなのだろうと思います。あの時は市長さんが「強い信念をもって、鉄道は残せ」という方向で活動されていたと聞きました。